人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

足立美術館

日本人はほぼ知らないけど、世界では有名

 皆さんは足立美術館という名前をご存じですか。私も全く聞いたことがありませんでした、あるテレビ番組を見るまでは。先日点けっぱなしになっていたテレビでやっていた番組が日本大好きな外国人を日本に招待するという企画でした。この頃は外国人に私たち日本人が知らない日本の良さを教えて貰う番組を多く見かけます。今回も目から鱗で、日本にこんな素晴らしい場所があったんだと改めて実感しました。スタジオのゲストも全員一致で「行って見たい」と称賛の嵐でした。

 今回の主役はポーランドからやってきた庭園が大好きな男性でした。彼の職業は庭師で、自宅の庭にも素晴らしい日本庭園を造っていました。ただ、庭園のためのいい石が手に入らず、隣国のチェコにまで買い付けに行くのですが気に入った物はないようです。そのことをとても残念がっていました。彼には日本で行って見たい場所がいくつかありましたが、その中での一番が足立美術館でした。足立美術館の何がそんなにいいのか、それは意外にも日本庭園だったのです。番組のナレーションによると、東京ドーム何個分にも匹敵する広大な面積を誇り、訪れる人々を魅了せずにはおかない景観で有名なのだとか。アメリカの世界で一番美しい庭園のランキングで10年連続第一位を獲得しているのも映像を見れば頷けます。

 番組ではポーランドの庭師であるセバスティアンさんが、美術館の庭師7人と一緒に仕事をする姿に密着しています。庭師の仕事がどんなものなのかに興味があったのですが、最初は庭園の掃き掃除で少し退屈しました。でもそれは杞憂に終わり、これがなかなか面白いのです。それと足立美術館の庭師はこんなこともするのかと言った新鮮な驚きもありました。足立美術館の庭師の一日はまず開館時間の8時半前にお客さんの目線で庭を眺めて、何か変わったところがないか、それと植物の状態をチェックするところから始まります。この時は庭師のリーダーの人がコケが乾燥しているのを見つけて、水やりの必要を指摘していました。セバスティアンさんがすかさず「水はどのくらい揚げるのですか」と質問していました。

 それから庭園で落ち葉を拾い、草取りをするのが毎日の日課だそうですが、それだけではありません。足立美術館では庭園の内観だけでなく、外観にも気を配っているのです。庭園から見た外観が美しくないとそれだけでせっかくの日本庭園の美しさが台無しになってしまうからです。折も折、庭師のひとりが遠くに見える山の木が二本変に突き出ているのを発見しました。仲間にそのことを伝えると、皆同意見でした。それで彼らが何をしたと思いますか?早速車を飛ばして現地に行き、太い竹の木を二本切り倒したんです。美術館にいる仲間の庭師と携帯電話で繋がって、それと思しき竹の木を揺らして確認を取った上で、伐採したので間違いはありません。

 次に興味深いのは仮植地(かしょくち)の存在でした。足立美術館は日本庭園にあるマツの木を何かあったときのために、いつでも取り換えることができるようにスペアを育てているのです。舞台に例えると、いま庭園にある木々がメインキャストとするなら、仮植地にあるのは補欠に相当します。アカマツクロマツなど、5年、10年、15年といった樹齢の様々なスペアを育てるのも庭師の大切な仕事だそうです。

 庭師は本当に重労働で、この仕事が好きでなければ到底続かないというのが正直な感想です。そうだ、もうひとつ忘れてはならない重要な仕事がありました。それは日本庭園にある石庭のことで、ここの石の模様は京都の竜安寺の石庭のように流線状ではなく、平行な線になっています。その細かい石を、なんと1年に一度は庭師自ら洗っているというのです。10トントラック2台分にもなるという大量の石を洗って、ゴミや形の揃っていない石を取り除くのです。それと庭師は掃除をするのとは形状が違う竹ぼうきで見事に平行な線を石庭に描いていきます。セバスティアンさんも真似をしてやってみましたが、”慣れるより慣れろ”である程度時間が必要なようです。

 この番組を見て、馴染みのなかった島根にあんな素晴らしい場所があるのだと知りました。まさに私にとっては日本再発見とも言える機会になりました。それにしても、庭師は想像以上に繊細さを持ち合わせていないとダメな職業なのですね。

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