人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

ひとり暮らしは大人への第一歩

今週のお題「大人になったなと感じるとき」

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家を出たいと思った時が大人になった瞬間

 振り返ってみると、私の場合は自分の家を出たいと思った瞬間が、大人になった時なのかもしれません。もちろん、精神的自立なのですが、それまでの親に甘えていた自分はもういなかったわけなのです。田舎での平穏な日常を捨てて、なぜ東京に行きたいと願ってやまなかったのか。今思うと、自分が置かれていた環境が大いに影響していて、何もない退屈な田舎の暮らしが嫌になったのです。ふとこれからの未来のことを考えたら、どうなるのか容易に想像できてしまいました。その未来は自分にとってはとても受け入れがたいものでした。すると、今いる場所から逃げ出したくなってしまいました。決して親と仲が悪いとか、兄のお嫁さんとうまく行っていないとかではないのです。むしろその逆で幸せに暮らしていたのですが、自分の未来を変えたかったのと、外への憧れに抗えなかっただけのことです。

恋の時間』に背中を押されて

 何とかしなければ、それもできるだけ早く、と思い詰めて悩みました。そんな時、私の背中を押してくれたのが、一冊の本で大いに勇気を貰いました。その本は作家の青柳友子さんの『恋の時間』で、甘い匂いのするタイトルからは想像もつかないような内容でした。恋愛の甘酸っぱさからは程遠い、傷だらけの青春時代を赤裸々に綴ったエッセイ集です。青柳さんのその本を読んで、まだ若かった私は深く感銘を受けてしまったのです。自殺未遂を経験した後に、人生をやり直そうと家を出ることを決心します。生活の糧を得るために、夜はキャバレーに勤めて客の相手をするのです。

 昼間は大学に通い、懸命に自分の力だけで生活していました。そんなある日、友だちが書いているので、「私も書くわ」とたまたま書いた小説が編集者の目に留まります。その時ものすごい衝撃を受けるのです、「こんなものがお金になるのだ!」と。その時貰った報酬は青柳さんにとっては思いもよらない金額でした。それが青柳さんにとっての作家への第一歩となったのです。これぞ運命というしかありません、才能がある人というのは神様が放っておかないようです。それでも、本を読み終えた後に残ったのは、青柳さんが味わった痛みとピュアな性格からのメッセージです。つまり読者へ「傷つくのを恐れず、全力で生きよ」と励ましているのだと、少なくとも私はそう受け取ったのです。

ホームシックとは無縁な生活

 実際に家を出てみると、何もかもが見たこともなく、物珍しく新鮮でした。生まれて初めて不動産屋さんに行きましたが、そこの人たちがまた親切で、大家さんも歓迎してくれました。何もわからない私は彼らにすべてお任せで、世間でよく言われるようなホームシックとは無縁でした。自分だけのお城を持ったように錯覚し、その高揚感で舞い上がっていたのです。これからは何から何まですべて自分でしなければなりません。今までのように「ご飯ですよ」と呼んでくれる家族はいないのですが、不思議と寂しくはなかったのです。暖かいご飯よりも、あの頃はとにかく自由が欲しかったみたいです。とにかく、自分ひとりになれたのが嬉しかったようで、自分の部屋でだけひとりなのとは雲泥の差なのです。未来に向けて希望しかなかったあの頃、つまり精神的に自立したと感じた瞬間が、私にとっての「大人になったなあ」と思った時なのです。

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