人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

思いやりと率直さとは両立するのか

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▲スペインのヘローナにある大聖堂。NHKまいにちスペイン語テキストから。

アンの行動が周囲に波紋を投げかけて

 BBCのドラマ「アンという名の少女2」はいつ見ても何かしらドキッとしてしまうのです。それは原作のイメージとは一線を画していて、毎回リアルな問題を視聴者に問いかけているからです。現在でこそ人の性の多様性は認められるようになりましたが、まだまだ理屈ではわかっていても俄かには馴染むのは難しいのです。生まれながらにして人間が平等であることはさておき、生まれた性に関わらずそれを選ぶのもまた自由であると認めるには時間がかかるものです。アンの友だちコールも男の子なのですが、他の子とは違って生まれつき女の子の心を持っています。それで、クラスの男子たちから、「お前は女みたいだ」とからかわれ、いじめられもします。コールは変わり者で絵を描くのが唯一の生きがいです。でもある日、大事な右手に怪我を負わされて、絵筆が握れなくなってしまうのです。

 コールは意気消沈して絶望するのですが、アンの親友のダイアナが親戚のおばさんの家のパーティ―に招待してくれます。有名な作家や音楽家、画家といった面白そうな人達が集まるとあって何かしら刺激を貰えると思ったからです。そこである芸術家と出会ったコールは、「絵筆が握れないなら、手そのものを使って作ればいいわ、例えば、粘土とか」と希望に満ち溢れた助言を貰います。コールはアンたちが隠れ家にしている森の秘密の場所で、粘土で彫刻を作る日々を送るようになります。その場所は決して他の人間には教えてはいけない聖域のような大切な守るべきところでした。ところが、アンは新しい先生に感激し、理想の先生だと思いこむあまり、何を思ったのか隠れ家を教えてしまうのです。

 コールが作った彫刻を褒め称えた先生に、アンはコールがずうっと学校に来ていないこと、その理由はクラスの男子のいじめが原因だと話してしまうのです。それを聞いた先生は何とかしなければと言う正義感を発揮し、コールの家に押しかけます。実はコールは学校に行っていないことを家の人に隠していたのです。なぜなら、本当のことを言ったら、やりたくもない農場の仕事をさせられて、作品を作る時間を奪われてしまうからでした。アンが先生に打ち明けたことによって、コールはついに自分の居場所を失くしてしまったのでした。学校にも森にも居場所を失くしたコールはどうなってしまうのか、これからのドラマの展開に目が離せません。

 新しい先生が来る前にクラス担任だった先生は、教え子の女子学生と結婚して他所で暮らすはずでした。でも、その結婚は心から彼女を愛しているのではなくて、自分がコールと同類の人間だという真実を隠すためでした。先生は本当の自分が大嫌いでしたから、コールに冷たく当たりました。先生のそんな気持ちをコールは以前から感じ取っていたのです。結婚が決まった女子学生は未来の夫に「学業と結婚生活を両立したい」と自分の意志を伝えるのですが、彼は許してくれません。さて、結婚式の当日、父親にエスコートされて彼女はバージンロードを歩いて新郎の元へ歩いてきます。でも彼と向かい合い見つめ合ったら、どう考えてもこのまま結婚するのは嫌なのです。やっぱり友だちと一緒に学校で学びたいのです。だから目の前のこの人とは結婚できないと思ったのか、走ってそのまま教会から逃げ出してしまいます。

 花嫁が逃げ出してしまったので、その場は騒然となり、アンたちはみんなで追いかけました。辺り一面の雪景色の中を走っていた花嫁は、滑って転んでしまいます。抱き起こすと、泣いているのかと思いきや、彼女はけらけら笑い出したのです。そして雪の中で嬉しそうに踊り始めたので、皆も安心したのか一緒になって踊りました。結婚を自らの意志で拒否した彼女の行動には、腰を抜かすほど驚きました。あの場面では相当勇気がなければ、同調圧力に押しつぶされてしまうのが普通です。ただ、結婚を拒否したといえ、彼女も相当に傷ついていることには間違いないのです。だから早く忘れたいし、思いだしたくもないはずです。

 それなのに、アンのおたんこなすときたら、新しい先生に「彼女は前の先生との結婚をやめたのよ」などと周りのひんしゅくを買うことを言ってしまうのです。アンはデリカシーが無さすぎると感じるのですが、アンにしたら悪気など全くないのです。当の本人も周りもすでに知っていることなのに、なぜ皆顔をしかめて不機嫌になるのかわからないらしいのです。でもアンの名誉のために言っておくとしたら、彼女は誰よりも思いやりがあって、ただ少し率直すぎるだけなのです。

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