人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

住人の悩みは尽きない

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隣人のタバコの煙が悩みの種で

 3月の初めに市営住宅に引越した友人に電話して、近況を聞いた。友人の住む建物は15号棟で、周りには12階建てのアパートというより、マンション?の方がふさわしい建物が立ち並んでいる。近くにあるのは14号棟と17号棟で、どうやら17号棟が一番新しいようだ。自分の住んでいるのが15号棟なのだから、当然他の番号の建物もあるのだろう。そう思った友人は早速朝の散歩のときに散策を始めた。好奇心に駆り立てられるままに、毎日違う方向に向かって歩いていたら、市営住宅のマンモス群ともいうべき地帯に遭遇した。歩いても、歩いても番号を振ってある市営住宅の建物がどこまでも続いていた。どれもこれも全く同じ外見で、なんだか奇妙にも思えてしまう風景だった。昼間だから、ちゃんと識別できるのだろうが、一転して暗い夜間ともなれば、異邦人では到底分からないだろう。とにかく、友人は、ついに「2号棟」と書いてあるビルを見つけて、「本当にあるんだね」と納得した。

 市営住宅のマンモス群のある場所は、ただただビルだけで、スーパーがあるわけでもないし、店と名のつくものが何も存在しない灰色の世界だ。歩いていてもつまらないので、もう二度とあそこには行きたくない。考えてみれば、同じような建物に住んでいると言っても、その中の人たちは血も涙もある人間だ。その人たちの生活が、心模様が皆同じはずがない。友人の住んでいる部屋は2Kのバリアフリー住宅で平成17年に建てられた、市営住宅としてはまだ新しいと言える物件だった。長いこと空き家だったようで、だから以前書いたようなインターネットのジャックが使えないというありえない事態になった。それを除けば、南向きで7階の日当たりのいい部屋は快適だった。

 驚いたことには、部屋全体に換気システムが付いていて、まるでホテルの部屋にいるように、いつも何か風の鳴る音、たぶん、空調のせいなのだが、常に換気装置が働いている。そのせいで、浴室はじめじめ感が全くなく、タイルの床もすぐ乾いてしまう。つまり、以前の部屋ではあんなにも頭を悩ませていたカビとは無縁でいられるかもしれないということだ。友人の夫はヘビースモーカーで、家でもよくタバコを吸う。「おい、ここはちゃんと俺のタバコの煙が外に行くぞ。これはいいなあ」などと夫は喜んでいる。以前のアパートのように部屋がタバコの煙で茶色くなることもないし、何より空気清浄機がいらなくて助かると勝手に思っている。

 その話を引っ越したときに水道の元栓がわからず困っていた時に助けてくれた階下の人にしたら、意外なことを言われてしまった。その人は6階の角部屋に住んでいるヤマムラさんでタバコの煙でとても困っていた。彼女の部屋の隣もまたその隣の人もタバコを吸う住人だった。今世の中ではマンションなどのベランダでタバコを吸うのが問題になっているのだが、この建物では家の中でも周りの迷惑になるようだ。部屋の中で誰かがタバコを吸うと、その煙は換気されて外に、ここではベランダに出ていく。するとその煙はその時吹いている風向きによって、ある方向に集まる。もし万が一にでも、それが自分の住んでいるベランダの方角だったとしたら、それは迷惑以外のなにものでもないだろう。でも実際にヤマムラさんのベランダに干した洗濯物はタバコの匂いがする。そうなると、もうベランダには洗濯物が干せないので、いいお天気なのに心は恨めしくて堪らない。

 ヤマムラさんは以前住んでいた市営住宅が取り壊しになったので、今の建物に移り住んだ。当時は自分で部屋が自由に選べたらしく、「自分がよく考えなかったのが悪いんだけど」と現在の部屋に決めてしまった後悔の念を口にする。隣人たちにも遠慮せず、自分は本当に迷惑しているのだと会うたびに伝えている。だが、いっこうに改善の兆しはないようだ。ヤマムラさん曰く、「タバコを吸うなとは言わない、でも自分の出す煙は自分だけで引き受けて」。つまり、部屋が汚れるのが嫌だとか、そんな戯言を言っていないで、空気清浄機でも買って少し周りに気を使って欲しいのだ。

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