人生は旅

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食べ盛りの息子のお弁当

今週のお題「お弁当」

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▲この写真はパリの惣菜店の光景ですが、以前どこかで見たことがあるような気がしました。思いだしました、ベルリンのカフェのビュッフェ形式のランチの時と同じです。外国では珍しい好きなものを自分で選べるシステムになっているのです。稲葉由紀子著『パリのお惣菜』から。

毎日お弁当作りと格闘していたあの頃

 先日、友だち3人とカフェでおしゃべりをしていたら、いつの間にかお弁当の話で盛り上がってしまいました。中でも男の子を持つ友人は息子が高校生の時はお弁当作りと格闘していたと打ち明けてくれました。男の子の食欲があんなにも凄いとは夢にも思わなかったのです。中学の時は給食というものがあったし、部活もしていなかったので気にもなりませんでした。でも高校に入って、運動部、それも陸上部に入ると話は違ってきました。朝は早起きして学校に行って朝練をし、放課後も部活に没頭です。そんな息子は母親に毎日弁当を2つ作ってくれるように要求しました。ひとつは早弁のため、もう一つはお昼に食べるための弁当、あるいはお昼に食べても、授業が終わる頃にはお腹が空くので、部活の前に食べたりもしていたのです。

 食べるのはあっという間ですが、作るとなると時間と労力が必要であっという間にはできないのです。息子は食べる人、母は作る人なのですが、その母の頭の中は毎日弁当のことでもうグチャグチャでした。あの大きな弁当箱の隙間をどう埋めようか、何を押し込んだらいいのか途方に暮れていたのです。弁当箱ひとつならまだしも二つもあるのです。夕飯の残り物で済ませて楽をしようなどと考えていたら、あろうことか全部食べられてしまって残り物がありません。冷凍食品を買ってみたら、中を見てびっくり、スカスカで実体があまりないから揚げがコロンと出てきました。こんな体裁のいいものでは、息子のウワバミのようながっつく食欲には太刀打ちできません。それで気が付きました、この年代の男の子には質よりも量なのだと。

 夕食の支度をするときに明日の弁当のおかずも一緒に作って置くようにしました。息子は朝早く出かけるので、朝起きてから作ったのでは間に合わないからです。野菜もホウレンソウやブロッコリーなどは茹でで冷蔵庫に入れておきます。唯一朝作ったのはポテトサラダで、前の晩炊飯器のタイマーをセットするときに、じゃがいもを1個コロンと入れます。翌朝蓋を開けて、取り出したらスプーンで潰し、キュウリ、ハムとマヨネーズで和えるだけです。これなら弁当箱の隙間を埋めるのに最適なおかずだと我ながら満足感に浸っていたのです。でも息子からの意外なひとことで自己満足でしかないことがわかりました。「お母さん、じゃがいもは野菜じゃないよ」と指摘されてしまったのです。そうでした、息子からのリクエストは「たんぱく質と野菜多め」の弁当でした。「そうか、できるだけ太りたくないのだから、当たり前だよね」と反省したのです。5キロの

 息子が飽きないようにと、肉と魚を一日ごとに交替に入れるようにし、無い知恵を絞って工夫して、とにかくあの頃は弁当作りに熱中していました。5キロのお米が1週間もたないので、銘柄にこだわっている余裕がありません。激安スーパーの特売日を利用して4~5袋買い込みました。その頃はまだ中学生だった娘と夫との4人暮らしでした。食べ盛りの息子が一人いるだけでもこの有様です。息子さんが何人もいる家庭を想像してみたら、眩暈に襲われてしまいました。話の途中で、女の子しかいない友人が「でも、もうそんな大変な時期は終わったんでしょう。よかったわね」と明るく言いました。

 ところが、今また弁当作りが始まったと言うのです。「息子さんはたしか就職して仙台に行ったんだよね」と不思議に思って聞いてみました。「一言の相談もなかったけど、あの子はそういう子だから」。実は息子さんは突然会社を辞めて家に帰ってきたのです。それは資格試験の勉強をするためで、予備校に通って来るべき試験に備えようとしていました。だからまた弁当が必要なのでした。

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