人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

異国の駅前にある公園

今週のお題「好きな公園」

旅人の心を癒してくれるのは小さな森

 以前自由に海外旅行に行けていた頃、ヨーロッパを旅していて、日本との歴然とした違いにカルチャーショックを受けたことがある。初めて訪れたのはイタリアだったが、街を歩いていたときはそれほど日本との違いを感じることはなかった。でも、フィレンツェドォーモの尖塔に上ったときは雷に打たれたような衝撃を受けた。そこから見た景色は圧巻で、何か一枚の美しい絵画を見ている気分になった。レンガの赤と、どちらかというと茶色に近いのだが、木々の緑とのコントラストがあまりに美しかったから。つまり、森の中が沢山の建物で溢れている、そんな感じに見えた。「なんなんだ、これは!?いったいどこに森があるんだろう?」

 連日、フィレンツェの観光名所を見て回ってはいたが、街の様子にはさっぱり関心がなかった。ただ、建物の中と大勢の人を見ていただけにすぎず、自分の身の周りを見ようとしなかっただけだ。正直に言うと、最初はドォーモに上るのなんて、どっちでもよかった。友だちが上りたいというから仕方なく付き合った。どうせ上から見下ろす景色なんて、面白くもなんともないと決めつけていた。だが、上から見たフィレンツェの街は予想以上に素晴らしかった。こんなにも街全体が緑で溢れているとはとても信じられなかった。ふと東京タワーに上った時のことを思いだした。果たしてこんなに緑があっただろうか。東京とフィレンツェを比べること自体が間違っているのかもしれない。でもスウェーデンストックホルムの大都会にだって、森があって鹿と遭遇することもあった。

 だとすると、都市に森があっても決しておかしくはない。事実、以前ヨーロッパを旅した時は、鉄道駅を出ると必ずそこには公園があった。噴水と木々の緑が真っ先に目に飛び込んで来た。列車を乗り継ぐのだが、まだ2時間くらい時間があった。パリから長距離列車に揺られてきたので、少し疲れもあった。どこかで一休みをしようと探したら、公園内の木々の生い茂った一角にカフェのテーブルがいくつも並んでいた。なのに先客は一組だけで、そこへ、近くにある店から、ちょうど店員がクレープを運んできた。そのクレープは大きなお皿にはあまりにも小さかった。その上、茶色いだけであまり美味しそうには見えなかったし、何よりも失望したのはその上に乗っかっていたチョコクリームがほんの少しだったことだ。

 あれは一体いくらするのか確かめようと、テーブルに置かれていたメニューを見てみた。そしたら、日本円で1200円もするとわかって仰天した。いや、正確に言うとそれはチョコなしの値段だった。いわゆる、プレーンという名前が付いているクレープだ。あれが、あの茶色い物体がそんなにお高いのか、そう思ったら、店員さんが来ないうちに退散することにした。どう考えても、休憩にちょっと立ち寄る場所にしては値段が高すぎる。では他の人たちは一体どこにいったのだろうか。少し歩くと何やら行列を発見した。それは、ハンバーガーショップで、マグドナルドではなくて、聞いたこともない名前の店だが繁盛していた。テラス席もあるのだが、満員の様子で入るのを諦めかけたが、少しすると目の前の客が帰り支度を始めた。これはチャンスとばかりに急いで開いた席に荷物を置いて、席を確保した。

 夏の強烈な日差しを遮るためにパラソルが付いているテーブルでハンバーガーを食べて、コーラで喉を潤した。このハンバーガーショップの人気の秘密は何と言っても安さだった。ハンバーガーと飲み物の代金二人分を合わせても、あのカフェのクレープ一枚分の値段だった。だからと言って、ハンバーガーが不味かったというわけでもなく、日本で食べるモスバーガーと同様に美味しかった。そんな訳なので、人々は高級カフェではなくハンバーガーショップに殺到するのも無理はない。ただ、あのハンバーガーショップの喧噪よりも木陰の静寂を好むならば、絶対高級カフェがお勧めなのだが。

mikonacolon