人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

100万円分の図書カード

今週のお題「100万円あったら」

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 いつでも、どこでも、躊躇なく本を買いたいから

 考えてみると、近頃は以前と比べて気軽に本を買えなくなりました。財布の紐が堅くなったのです。それは当然入ってくるお金がこれからはどうなるか、わからなくなってしまったからです。自然と防衛本能が働いて、「守らなきゃ」と思い無駄遣いをしなくなったのです。だから本を買うとなると失敗したくないので、新聞の広告や書評を頼りにするしかありません。そんな風に念には念を入れて買っても、自分にとってはあまり面白くないこともあるのです。自分にその本の良さを理解する良識が欠けているのかもしれません。でも正直な感想なのですから、あとはすぐに忘れるしかありません。

 それでも、「見たこともない世界を見せてくれるのかもしれない」という好奇心だけは沸き上がって来るので、ついつい買ってしまうのです。だから夢のような話ですが、100万円分の図書カードが欲しいのです。本屋にふらっと行ったら、お目当ての本の隣ある本のタイトルが気になることがあります。自然と手に取って読んで見たら、なかなか面白いことが書いてあります。冒頭から惹きつけられて、2~3ページ読んでみたら、どうしてもその続きが読みたくなりました。これ以上立ち読みしたら、小さな本屋なので店員さんが飛んでくるのは目に見えています。そうなると、選択肢は欲望に目をつぶって別の場所に移動するか、あるいは買って帰るかのどちらかです。そんなときに図書カードがあれば、無駄な葛藤をしなくていいのです。そんな心とお財布の自由さがあれば、どんなにいいかと想像してみると最高の気分になれます。買って帰って読んだ見たら、自分の思惑とは違っていて、「買わなければよかった」と後悔するかもしれません。でもそれでもいいのです、だって100万円分も本を買えるのですから。

 何もカードでなくても、現金で買えばいいと思うかもしれませんが、それは違います。本専用のカードで他の物は買えないところがいいのです。純粋に生活費とは区別できるからです。何と言っても、失敗を恐れることなく値段を気にすることなく本を買える、そんなストレスフリーな身分に一時でもなってみたいものです。普段の生活の中では、敢えて冒険してまで本を買う機会は訪れません。でも思ってもみなかった臨時収入があったりすると、思っていたより簡単にできてしまうことを知りました。私にとっては叔母が送ってくれたデパートの商品券で、予期せぬ贈り物でした。

 早速都心の大型書店に行きました。そのとき私には欲しい本があったのですが、ペラペラと捲っていたら、内容が思っていたのとは違っていました。それで店の中を歩き回り、外国文学の棚に目を留めるとそこに『旅の効用』を見つけました。それはスウェーデンでベストセラーになった、ペール・アンデションの旅行記でした。この本を読み始めたら、これが単なる旅行記ではないとわかってものすごい衝撃を受けました。従来の旅行記とは一線を画していて、いわゆる、歴史書というか哲学書というか、とにかく著者の教養が溢れている本なのです。そして、この本の中で著者は過去と現在を自由に移動し、旅の途上にあっても常に頭の中は思索の真最中なのです。そんな不思議な雰囲気に導かれて、気が付いたら読み終えていました。正直言って、自分のお金だったら、この本、2400円の値段の本を買うだろうか、そう考えると否です。あくまで思わぬ臨時のお金だからこそ気軽に買えたことは間違いありません。そういう意味で叔母とこの本に出会えた幸運に感謝でいっぱいなのです。

 今年度の本屋大賞で翻訳部門で第一位になった『ザリガニの鳴くところ』も読みましたが、さすがにアメリカで500万部も売れただけのことはあると思いました。新聞各紙の書評も読んだうえで、それでも迷いに迷った挙句の果てに勇気を出して買いました。結果的に大成功だったわけですが、ベストセラーだからと言って自分が感激するかどうかはわからないのです。それでも、買って実際に読んでみないことには埒が明かないのですから、そういう機会を持てること自体幸運と言えるのです。現実には本一冊が2千円以上するので、その値段が高いのか妥当なのかは個人の問題です。でもこれ以上値段が高くなると、本と出会う機会すら失われてしまうのかもしれません。

mikonacolon