人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

バスの運転手さん

バスの運転手さんの愚痴を聞いたら、目から鱗

 TBSラジオの『宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど』を聞いている。この番組は様々な職業の人の愚痴を聞く番組で、最初は愚痴をぶちまけるなんて、暗い番組になるに決まっていると思っていた。だが聞いてみると、これが意外に面白い。文字通り宮藤さんに言ってもしようがないのだが、その愚痴を明るく笑い飛ばすことに意味がある。くそ真面目に考えても始まらない。この番組に出て話をしたい人たちは皆、今の自分の職業を心底嫌になっているわけでもない、それどころか気に入っていて、辞めたいなどとは思っていない。

 その点で、ふだん職場で交わされる暗いイメージが付き纏う愚痴とは一線を画している。この番組を聞いていると、やたら笑える。いや、ここは笑うところではないでしょうと思っても、でも笑ってしまう。なぜかと言うと、話をしている当事者の口調が明るいからだ。なんとかならないの?と思うようなことでも笑い流してしまえるから不思議だ。今の世の中暗い話ばかりだが、物事の捉え方次第で人の気持ちには天と地ほどの落差ができる。

 番組の冒頭でいつもMCの宮藤さんが視聴者からのメールを読むのだが、先日は大学の助教授の人の愚痴だった。その人は教授から原稿のチェツクを頼まれることが多いそうで、当然、間違いがあると教授に躊躇なく指摘する。ところが当の教授はT大出身というプライドがあるらしく?自分の間違いを素直に認めようとはしない。それで、こういう場合はどうしたらいいでしょうか。何かいい対処法は無いでしょうか。などというメールの内容だった。

 それに対しての宮藤さんの返答が素晴らしい。この番組は物事の解決法を見つける番組ではないですから、あくまでもその前の段階なんです。いろんな人の愚痴を皆で聞いてあげて、同情したり、共感したりして共有する番組ですから、と宮藤さん。そうなんです、まさにその通りで、誰も彼も何とかしてもらおうと思って番組に出演を希望するわけではないらしい。要するに、自分たちの置かれている現状を世の中の人にわかって欲しいと言うよりも、ただ知って欲しいだけなのだ。

 さて、先日はバス運転手さん二人がスタジオに来てくれた。この番組は同じ職業の人がふたり集まれば出られるらしい。バスの運転手さんはどう見てもいろいろ大変だとは薄々は見当がつくが、普段私は滅多にバスには乗らない。だからか、この番組を聞いて驚くべき現状に目から鱗だった。まずは昔と比べて格段にクレームが増えている。しかもちょっとしたトラブルがあると、それが乗客の側に問題があるとしても、その日のうちにバス会社に上がって来る。一番理不尽でやりきれないのは、運転手に明らかに非がないケースでも「お客さんに失礼だから、これからは気を付けて」と言われてしまうことだ。

 だから、できることならトラブルは避けたいのが人情だ。だが、時代の流れがそれを阻む。その代表とも言えるのが、スマホを片手にイヤホンを耳に着けたまま乗ってくる人たちだ。いくら何でもイヤホンをつけていては外の音は聞こえない。バスの料金を支払う際にICカードのピイッという音すら本人には聞こえない。聞こえなくても払ったつもりでそのまま奥へと進んでいく。たまに料金が足りなくてピイッと音がしない時がある。そんなとき運転手が注意すると、払った払わないでちょっとした諍いが起きる。

 ある時は耳にイヤホンをつけているものだから、停車駅のアナウンスが聞こえない。降りる駅を通過した途端に慌てて「降りますから、止めてください」と絶叫されてしまう。途中でそんなことを言われてもこちらは困ってしまうのだが、ひとこと注意などしようものなら後で面倒なことになるに決まっている。

 それでも危険だからどうしてもやめてもらいたい場面も多々ある。宮藤さんが運転手さんに「その場合、お客さんに注意する時って、マイクでするんですよねえ」と尋ねた。すると、意外にも「信号で止まったときに直接言うんです」との答え。その理由を聞いて仰天した。「マイクだと大勢の前で恥をかかされたとクレームがつく」のだそうだ。どうやら当たり前のことをマニュアル通りにやっていればいいわけでもないらしく、臨機応変、かつ繊細な対応を迫られるのがバスの運転手の仕事らしい。

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