人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

コーヒーの匂いに誘われて

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人を誘惑せずにはおかない匂い

 駅前のスーパーの向かいにコーヒー専門店ができてもうすぐ1か月になります。以前は花屋だったのですが時代の波に飲み込まれてお決まりのマンションになりました。そのビルの1階でいったい何のお店と思ったらこだわりのコーヒーでした。当初は持ち帰りのお客さんで行列ができるかと思ったのですが、意外にも人の反応は冷ややかなようです。表にあるメニューを見てみると、ラテが440円で税別なので実際は500円近い料金になります。しかし少し先にあるできたばかりのタピオカ店もこのくらいの値段なので決して高くはないのです。

 毎日のように店の前を通り過ぎるのですが、お客さんがいません。たまに居たとしても狭いイートインスペースに一人か二人ぐらいなものです。一度くらいは買ってみようとは思うのですが、一人では敷居が高いので、誰か家に尋ねてきたらその時がチャンスです。とはいっても人との交流を控えなければならない状況では誰も来ないので不可能です。それにしても残念なのはせっかくコーヒー専門店でありながら、独特のいい匂いが感じられないことです。例えば、パン屋だったら焼き立てパンの香ばしい匂い、自家製もなかの店なら小豆を炊く、まさにぜんざいの匂い、そんな匂いに出会ったなら思わず買ってしまいそうです。コーヒーだってまさしくそうで、豆が焦げるような嫌な匂いではなくて、人を誘惑してくれるような香りがあればいいのにと思うのです。

毎朝の豊潤なコーヒーの匂い

 コーヒーの匂いで思い出すのは田舎の高校に自転車で通っていた時のことです。車がなければ不便な土地柄なので、電車で行くより自転車の方が早くて便利なのです。毎朝自転車で30分の道のりを通っていたのですが、学校に一番近い場所に1軒の喫茶店がありました。実は家から学校まで行く間にたくさん喫茶店を通過するのですがその店が最後の店でした。そしてその店の前を通るのが楽しくて仕方なかったのです。その理由はコーヒーのいい匂いを満喫できるからです。「なんていい匂いがするんだろう!」と感激していたようです。当時はまだ子供で「コーヒーは苦くてあまりおいしくない飲み物」という認識しかなかったのですが、匂いは別であのむせ返るような独特の匂いに魅了されていたわけです。

 その店の名前は今でも覚えていて、たしか「サンパウロ」でコーヒー豆と同じ色の看板がありました。何件もの喫茶店を通過しながら、なぜあの店だけあんな魅力的な匂いを放っていたのか不思議でなりません。どの店も田舎にあるコーヒーも飲めるし、食事もできるお食事処でした。「サンパウロ」もコーヒー専門店でも何でもなかったはずですが、残念ながらその秘密を知ることはできませんでした。というのも高校を卒業した私はもうその辺りに行かなくなったからです。家から遠いこともあり、その店に行ってみようとも思わずに、高校卒業と同時にケロリと忘れたのでした。

 本当の意味でコーヒーを美味しいと感じたのは上京してからです。アパートの大家さんが部屋を見学に来た私に目の前でコーヒーを煎れてくれました。それは砂糖もミルクも入っていない真っ黒なコーヒーでした。とてもいい香りがするので、「さぞかし苦いのでは」と思いながらも飲んでみたのです。そしたら、すっきりしていて微かに甘味もあって美味しかったのです。コーヒーが苦くない!それは私にとっては目から鱗だったのです。

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