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「コロナの時代の僕ら」と数学

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▲以前に本屋で見かけたことはあったが、当時は手に取ってみる気にはなれなかった。なぜなら新聞やテレビでさんざんコロナウイルスのことを聞かされていたからだ。もうたくさんだというのが本音でその中身まで考えようともしなかった。最初は数学に縁がないととっつきにくいかもしれない。でも読み込むうちにその素晴らしさに気づかされる。

2月末に事態の本質を見抜いていた

 思えば2月が終わる頃は、ひたすらトイレットペーパーとマスクのことだけを考えていました。薬局で最後に50枚入りの立体型マスクを買ったことを覚えています。ウイルスよりもトイレットペーパーのことで頭がいっぱいだった頃に、新型コロナの本質を的確にとらえていた人がいました。それは「コロナの時代の僕ら」の著者パオロ・ジョルダーノというイタリアの作家です。彼はトリノ大学の博士課程を修了していて、専門は素粒子物理学です。数学オタクを自称する彼はこのウイルスを数学の視点からとらえ、そのことを「感染症の数学」に頼ることにしました。感染症の流行のはじまりは、例えばビリヤードの球が二つのたまにぶつかって、さらに弾かれた球がまた二つの球にというようなパターンが繰り返されることだと説明しています。数学者が指数関数的と呼ぶ形で感染者数が増加し、そのスピードはアールノートいう記号で表され、どんな病気にも必ずアールノートはあるのだそうです。この数値は変化する可能性があり、どうなるかは僕ら次第だといいます。つまり私たちの行動が感染を拡大させるのか、あるいは終息に向かわせるのかを決めるのだと指摘しているのです。

感染症の流行は数学的な緊急事態

 著者がこの文章を書き始めたのは2月29日でイタリアではまだ感染者数は三百人ほどでした。そんな人々がまだ気にもしない時に早くからこのウイルスの異常さを感じていたのです。友達の家に招かれた時、ハグもキスもしようとしなかったので、みんなには嫌な顔をされました。でもこの時すでに彼なりの防衛本能から感染者が2千人を超えたら自主隔離をしようと決めていたのです。政府の要請でしか動こうとしない私たちとのあまりの違いに驚かされます。ただ今になってようやく自分の意志で動くことの大切さを実感しているところですが。

 著者にとっては数学は不安を抑えるための定番の策!?で、『朝起きたらすぐにその場ですぐに思いついた計算をしてみたりする』と落ち着くのだそうです。『感染症の流行は数学的な緊急事態でもある。なぜなら数学は実は数の科学ではなく関係の科学だからだ。様々な実体のあいだの結びつきとやり取りを文字に関数、ベクトルに点、平面として抽象化しつつ、描写する化学なのだ。そして、感染症とは、僕らの様々な関係を侵す病だ』と断言しているのです。

数学は日常の中にある

 数学と聞くと最近また動画サービスで見始めたトニー&リドリー・スコットが手掛けたドラマを思い出しました。FBI捜査官の兄が天才数学者の弟に助けられて事件を解決するのです。そのドラマの冒頭に出てくるフレーズが「数学は日常の中にある。すべての問題は数学で解決できる?!」というものでした。人や物の動きもすべて数式で表すことが可能で、まるで世の中の雑音ですらドレミに聞こえてしまう絶対音感の持ち主みたいです。ドラマの中で、ある会社で銃の乱射事件が起こって容疑者が逮捕されました。でも本人は黙秘し、捜査してもどうしても動機が分かりません。彼にはそもそも事件を起こす理由が見当たらないので捜査官の兄は弟に数学の視点での分析を依頼するのです。銃の打たれた方向と弾の行方を点で表示して見ると、興味深いことがわかってきた。容疑者はその場にいたある一人の人物にだけは銃を向けていないのだどう見ても意図的に避けているのだ。その結果、家族の命を奪うと脅迫されてやらされていたことがわかった。混乱の最中でも無事だった人物は事件の犯人の仲間だったのだ。と、まあこんな風にいつも数学の力を見せつけられるのです。

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