人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

ザリガニとお父さんとテレワーク

今週のお題「お父さん」

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▲普段は素通りしていましたが、ある日偶然こんな可愛い花を見つけました。

深夜にザリガニと話すお父さん

 加納明子さんの短編小説に出てくるお父さんはザリガニと話す。奥さんにも子供にも話せないことをザリガニに聞いてもらうのだ。ザリガニの名前はバルタンで、あのウルトラマンに出てくるバルタン聖人からつけた。なぜ家にザリガニがいるのかというと、近所のいたずらっ子たちがいじめていたのを子供が助けたからだ。気弱だけど優しい息子は見てみぬふりができなかったらしい。一人っ子の彼はザリガニを可愛がっていた。

 この家族は平凡だが今でいう仲良し家族だった。だが世間の厳しさは例外なくこの家族にも押し寄せてきた。お父さんは真面目に一生懸命仕事をしていた、家族のために。でもある日上司から仕事のことで無理を言われて悩んでいた。どこかで発散して帰ればいいのだが、お父さんはアルコールを口にしないらしい。世の中の多くのお父さんのように酔っぱらって憂さを晴らすなんてことはしないのだ。会社から家に帰るまでに頭の中の整理ができたらよかったのにそれができなかった。

 家に帰ると、奥さんも子供ももう寝ていた。いつの間にかそんな遅い時間になっていたのだ。リビングに入ってふと見ると水槽にいるザリガニのバルタンが動き回っていた。お父さんはバルタンに呼びかけてみた。「お~い、バルタン、元気かあ」。そしたらザリガニになら何でも話せるような気がしてきた。相手が人間だったら恥ずかしくて言えないようなことも言えるのだ。黙って話を聞いてくれるし、何を言っても馬鹿にしないところがいい。お父さんは深夜にバルタンに訴える、「俺はどうしたらいいと思う?どうしよう、バルタ~ン」。この場面を読みながら一瞬だが、お父さんの悲鳴が聞こえたような気がした。

テレワークは理想的な働き方?

 普通のお父さんは仕事の悩みを家にまで持ち込む人も多いらしい。その結果家族は巻き込まれて嫌な目に合うこともある。嫌な目に合うぐらいならいいが、ひどくなると家庭は戦場になることだってある。家族に当たり散らしたらどうなるわけでもないのにどうしようもないらしい。ストレスをお酒で発散しようとするのはその時だけは忘れられるからなのだと同僚が話していた。

 ではコロナの影響で導入されているテレワークという働き方にはストレスはないのだろうか?知人の女性は自粛期間中はほぼ在宅勤務で快適だったそうで、もう元には戻れそうにないという。なぜなら普段から職場の人間関係に疲れていたので、苦手な先輩と関わらずに済んでホッとしたからだ。元々この女性はあまり社交的ではない性格なのでその気持ちはよくわかる。人と接しなくていいという状況は人間に心の平安をもたらすこともあるらしい。そんなことを考えていたら、新聞の悩み相談のコーナーにテレワーク中の男性の実態が載っていた。

 彼の職場はもともと上司からの風当たりが強かったらしい。コロナでテレワークになって3か月たったが、今でもそれは変わらない。電話すると毎回、些細なことでも怒鳴られる。オンライン会議でも皆の前で嫌味を言われる。これじゃあ、以前と何も変わらないが、変わったことが一つだけある、それは先輩からのフォローが無くなったことだ。仕事は自分さえ頑張ればなんとかなると固く信じていた。でも周りの人の支えがあったからこそ仕事をしてこられたのだと気付いた。今はただ孤独を感じて仕事を変えようかと悩んでいるところだ。

 

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