人生は旅

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ドリトル先生 ガラパゴスを救う

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朝日新聞連載の「ドリトル先生 ガラパゴスを救う」の岩淵真理さんの挿絵から。

物語の展開にワクワクしながら、毎朝新聞を開いて

 私は毎朝、朝日新聞に連載されている福岡伸一さんの小説「ドリトル先生 ガラパゴスを救う」を読んでいます。ドリトル先生と聞いても、残念ながらその作品を読んだことがありませんでした。ずうっと昔ドラマで小栗旬さんがドリトル先生と呼ばれている獣医を演じているのを見て、どうやら動物の言葉がわかる人のことを指すのだとわかった程度でした。この小説の中のドリトル先生は、オウム、犬、豚、などすべての動物と話ができるナチュラリストでした。イギリスに住んでいるドリトル先生はある日スズメが「大変です!」と持ってきた一報によって、ガラパゴスに行くことを決心するのでした。

 スズメによると、今度イギリスからビーグル号という船が出て南米大陸に行くらしいのです。ドリトル先生の考えでは、船の通り道にはまだどこの国の領土でもないガラパゴス島があります。その島の位置は戦略的な見地からすれば、彼らは絶対見逃すはずがないのです。彼らが島に調査と称して上陸したら、島で穏やかに生息していた動物は捕らえられるか、あるいは殺されてしまいかねないと考えたのでした。それで彼らより先に自分たちがガラパゴスに行って動物を助け出そうと考えたのです。どうやって助けるのか、具体的には人間が来る前に彼らに隠れるように伝えて、この島にはたいして珍しい動物は居ないと思わせることでした。落胆した彼らが島に興味を失って出て行ってくれたら、大成功でした。映画やドラマのように彼らと戦うなどと言う大それたことを考えていたわけではありません。

 「ガラパゴスを救う」ことに決めたドリトル先生は気球でガラパゴスをめさすことにしました。それもビーグル号より早く着くために近道を選択することにしたのです。通常イギリスからガラパゴスを目指すには大西洋を南下して、南米大陸をぐるっと回ってさらに北上しなければなりません。では具体的にはどうやって先回りするのか、驚くべきことにドリトル先生は、パナマ上空を通って最短ルートでガラパゴスに行こうとしていたのです、それも気球に乗って。最初乗り物が船ではなくて、まさかの気球だとわかったときは仰天して、そんな危ないことはやめたほうがいいのにと思いました。

 それでも着々と計画は勧められて、気球のガスはどうするのか、何かいい方法はないかと考えたら迷わず動物に聞くことにしました。オウムのポリネシアが知り合いの鳥に聞いてみたら、洞窟に住んでいるコウモリたちがそのヒントをくれるようでした。案内されて洞窟に行ってみると、そこには何やらモクモクと煙が出ていて、どうもそれは水素らしいのです。ガスを気球の袋の中に貯めるのに差すロートのような役割をしてくれたのは鍾乳洞の細い棒でした。まるで氷のつららのようにぶら下がっているそれらは、中が空洞になっていて、ゴムホースの代わりもしてくれました。

 人間は何でもお金で買おうとしか考えませんが、自然の中にあるものに頼り切ることだってできるのだと目から鱗でした。ドリトル先生は動物の力を借り、自然が本来もっているものを最大限に利用しようとしました。そうやって準備を整えると、とうとう出発の日がやってきました。助手のスタンビンズ君と共にドリトル先生は気球に乗り込みました。その後何事もなく空の下の景色を楽しんでいたのですが、急に風がやんでしまうと気球は進まなくなりました。でも心配はいりませんでした。鳥のネットワークのおかげでどこからかカツオドリだちがやってきたのです。彼らは気球にあらかじめ取り付けて置いたロープを引っ張ってくれて、移動する手助けをしてくれました。さらに、「ちょっとしたプレゼントをしましょう」と言うと、海に潜って次から次へと獲物を気球の中に投げ込みました。そのおかげで、エビやイカ、タコ、トビウオなどの思ってもみなかったごちそうに舌鼓を打ったのでした。

 ところが、物語には災難はつきもので、気球は嵐にあってどこだかわからない場所に不時着してしまいます。今のところ木の枝に引っ掛かって命拾いしたスタンビンズ君の姿しか確認できていません。ドリトル先生は今頃どうしているのか気にしながらも、毎日朝刊を開いています。

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