今週のお題「サボる」
▲マドリードにあるR. ベラスケスによる鉄とガラスの温室建築。NHKまいにちスペイン語テキストから。
誰かのためなら、躊躇なくサボれる?
昨日の朝日新聞の夕刊の4コマ漫画はまさに今の世の中を切り取っているかのような話でした。それはしりあがり寿さんが描いている「地球防衛家のヒトビト」で、渋谷での19歳から39歳までのワクチン接種のことを話題にしていました。深刻な事態を指摘しているのかと思いきや、最後にちゃんと落ちがあってクスッと笑ってしまいます。今どきの母子あるあるとも言えるのではないでしょうか。ある喫茶店で地球防衛家の母さんが友人とお茶をしているのですが、どうやら話題は友人の娘のことです。娘がワクチンを家族のためにできるだけ早く打ちたいと言ってくれているのに、悲しいかな、仕事があって列に並びに行くわけにもいかないと相手は嘆いています。それを聞いて母さんは深く同情したのですが、驚くべきことに友人は代わりに行って並んでみたと言うのです。何と友人は娘の服を着て、若作りをして列に並んだというのです。そしたら、予約が取れたと感激し、ついでに「私もまんざら捨てたものではない」と嬉しくてたまらないようでした。
友人はワクチンの予約が取れたことよりも、自分が39歳に見えたことのほうが嬉しいのです。考えてみると、マスクをしていて顔が見えないのですから、十分あり得ます。「そこまでする人がいるのか!」とも思うのですが、抽選券を手に入れるためなのですから誰が並ぼうが問題ないとも考えられます。娘の代わりに母が並ぶという発想は私には皆無だったので、「この手があったのか!」と頭がガ~ンとなってしまいました。つまりどんな手段を使ってでも手に入れたいと必死になっているのです。
母さんはワクチンの話題が予想外の方向に向いてしまったことに仰天しました。友人は娘のワクチン予約のために、もしかしたら、仕事をサボってまで、娘のために行動したかもしれないのです。ワクチン接種を受けられるか否か、娘にとっては緊急事態ともいえる今の状況では、仕事は二の次なのです。自分がいなければ仕事が回らないではなくて、自分がいなくても誰かがやってくれるの方向に気持ちが傾くのです。今こそサボるべき時だと自分に納得させます。だから当然後ろめたさは微塵もありません。以前、何だったか忘れましたが、何かの新製品が発売されたときに列に並んでいた父親にテレビ局がインタビューしていたことがありました。その父親は娘のために会社を休んで、というか、サボって来ていたのですが、堂々として答えていました。娘のためには簡単に、というか娘のためだからからこそサボる理由になるのだと言いたいようでした。
人は自分の大切な誰かのためならば仕事をサボれるのだと、それも第3者から見れば、そんなことでサボるのと首を傾げたくなるようなことが理由になるのだと気付きました。そう言えば、私の同僚は、ある日突然会社を休みました。その日は得意先との打ち合わせもあったので「なぜこんな日に限って休むの?」と困惑してしまいました。翌日彼女に理由を聞いてみると、小学生の娘の飼っているハムスターが朝ゲージの中で冷たくなっていたというのです。ハムスターの死を受け入れられず娘は泣いてばかりで学校に行こうとしませんでした。そんな娘を一人で置いておくわけにも行かないので、仕方なく仕事をサボることになったのでした。彼女に言わせると、確かに仕事は大事なのですが、ここで娘の気持ちを無視して取り返しのつかないことになったら、それこそ後悔することになります。普段仕事優先で生活しているからこそ、母親が必要な時は今なのではと判断したら、結果としてサボることになったのでした。
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