人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

おもい出の味

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夫の母が作るとろとろのナス炒め

私の思い出の味は夫の母が作ってくれたナス炒めと山菜の煮物です。お盆とお正月に帰った時は必ず作ってもらえたし、お産のときにわざわざ来てくれたときもごちそうになりました。母が作るナス炒めは、本人の話では味付けは醤油と味の素だけで作ります。それなのに野菜の本来もっている水分が出るので、ナスの煮びたしのようにつゆがあってとろとろしています。それでいて、私たちが作るナス炒めのようにフライパンで炒めたような痕跡はありません、つまり、ナスに焼いたような焦げはついていないのです。だから、ナス炒めと言うよりは、フライパンで作る「ナスのトロトロ煮」と言ったほうが正確かもしれません。味は薄味ですが、ちゃんとナスに味がついていて飽きなくてやさしい味です。

誰も真似できない味

夫が高校生の頃、学校に弁当を持って行くと、みんなが自分のおかずをナスと取り替えてくれるよう頼みにくるのだそうです。一度友達に味見をさせたら、ナスの味に病みつきになってしまったらしいのです。毎日のようにウインナーソーセージ、ハンバーグや卵焼きなどと交換していました。でも彼の本音は、「どれもナスに比べると大したことない」でやはり自分の母親のつくるナス炒めは一番なのです。

母の味を再現できる人は誰もいないようです。義兄のお嫁さんも、母と同じように作るのですが、できたものが全然違います。ナスが固くてつゆがありません。夫の叔父も横浜のレストランで何十年もコックをやっていたのに、ナスだけは母のようにうまくいきません。

作り方の秘密を聞きたいのに

夫の実家の地域はどちらかと言うと個人主義で、あちらの人がよくいうのですが、「他人のことにはかまわない」というのがポリシーらしいのです。テレビ番組で「田舎に泊まろう」という番組がありますが、気さくで親切に泊めてくれる地域もあって楽しく見ています。その番組の中で何軒もお断りが続いた地域に夫の実家があります。テレビでみたかぎりではどの家も泊めてはくれなかったと記憶しています。周りがそんな環境なのに母の性格はサービス精神旺盛で気さくな人です。そんな母は我慢強くて、自分の身体が辛いのに皆に心配かけるからと遠慮して何も言いませんでした。だから病院に入院した時は相当に悪くなっていて、2週間もたたないうちに亡くなってしまいました。だから、もう母からナス炒めの作り方の秘密を聞くことはできなくなりました。ただフライパンに油をひいてナスを炒めるだけでは、りっぱなナス炒めはできないのです。母が亡くなって初めて、聞いておけばよかったと後悔した次第です。

 

mikonacolon