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金子みすゞの「みんなちがって、みんないい」

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「みんなちがって、みんないい」の意味を誤解

 昨日の続きで、金子みすゞさんの代表作ともいえる『私と小鳥と鈴と』をとりあげます。金子さんの故郷でもある山口県長門市に「金子みすゞ記念館」はあって、現在はコロナウイルスの影響で閉館となっています。そこの館長さんのおかげで金子さんの詩がどれだけ素晴らしいかを再認識させられます。短い詩ですので、サラッと読んでしまえば、たいして味合うこともなく言葉通りで終わってしまいます。ですが、館長の深い洞察力は、短い言葉の中に隠された金子さんの思いを私たちに届けてくれるのです。

『私と小鳥と鈴と』の詩の中にある最後のフレーズ「みんなちがって、みんないい」はなぜか記憶に残っていました。そのフレーズを私は多様性を認め合う社会があたり前なのだと理解しました。つまり、”自分は自分でいい”と自分を正当化することで、自分勝手でいいと誤解されてもおかしくない解釈の仕方でした。

なぜ「鈴と、小鳥と、それから私、」?

 もちろん間違った解釈なのですが、真の意味を知るには、その前にある「鈴と、小鳥と、それから私、」に注目する必要があります。タイトルと言葉の順序を比べてみると、鈴が最初にきて、私が最後になっています。なぜ、誰よりも大切な「私」が鈴よりも小鳥よりも下なのでしょうか。館長によると、鈴や小鳥それぞれの自分にはない素晴らしさに気づいて、自分中心の世界が”最後にひっくり返った”のだそうです。自分中心の世界は「私とあなた」であり、自分の位置が相手より上なので、相手を理解することはできません。それで私をあなたの位置まで下げると大切な何かが見えてくるのだと。

 つまり、「あなたと私」の目線で世界を見ると思い知らされることがあります。それは「私が私であるためには、私以外の人がいないと成り立たない」ということです。このような思慮深い解釈には本当に驚かされてしまい、自分がいかに薄っぺらな人間かを思い知りました。館長は小学生に話をするときに、「なぜ自分は人間なのだと思う?」という質問をするそうです。すると彼らは今まで考えたこともない難問を一生懸命考えてくれて、「自分の周りが人間だから」と思った通りに答えてくれるそうです。

自分にしかできないことがあるからいい

 改めて、「みんなちがって、みんないい」に込められた思いを考えてみると、できないことや知らないことがあってもかまわないそうです。なぜなら自分にしかできないことがあるのだからそれでいいのだと。この言葉をかけられたら、人はきっと励まされて暖かい気持ちになりますよね。鈴も小鳥も存在するだけで素晴らしいと認めたうえで、最後に自分もこの世界に生きているのだという謙虚な気持ちが現れています。「あなたと私」の目線での、これを館長は「金子みすゞのまなざし」と表現していますが、「みんなちがって、みんないい」はホッとする言葉です。短い詩でありながらも、言葉に隠された意味を探っていくと想定外の世界に行けることを発見しました。

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