人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

花火を見に行く

花火大会は廃止のはずだった、ところが・・・

 田舎での話だが、コロナが流行る前の夏の花火大会は台風のために中止になった。その後2~3日してから別の日にやろうと言うことになったが、悪天候のためまた中止になった。結局その年は花火大会は開催されなかった。それで、今年こそはとの期待が大きかったのだろう、コロナ禍にあっても、感染者が増えていても、それでも花火は打ち上げられた。大勢の観客のどよめく声が闇夜に響いた。

 実は田舎に行く前にネットで検索したら、花火大会は急遽中止ではなくて、廃止?になったと出ていた。なぜ、毎年恒例で行われていたのに今年からは無くなるのか、全く訳が分からなかった。だから花火を見るのは今年は無理だと思っていたら、義姉のミチコさんに「花火、見に行ってみる?」と誘われた。ええ!?花火大会は中止のはずなのにと聞き返したら、ネットの情報には続きがあると言う。今まではミチコさんが住んでいるA市と川向こうにあるB市とが合同で花火大会を催していたが、今年はB市が抜けたのだ。そのため、A市は地元の有力企業や銀行などに協力を求め、寄付金を集めることにした。花火大会の名称は少し変わったが、何とか開催にこぎつけた。考えてみると、もう3年も花火を見ていないことになる。だから人々も何かこう希望の光ともいえるようなものが欲しかったのではないだろうか。花火は一瞬にして目の前から消えてしまうが、その刹那さが愛おしくもある。

 ミチコさんに気軽に花火を見に行こうと言われた私は、こんな田舎だから、たいして人もこないだろうとたかをくくっていた。つまり、事態を軽く見ていたのだ。「家から歩いて行っても10分くらいだから」と言われて、それならいいかとたいして考えもせず出かけた。ついでに散歩がてら犬のマルプーも連れて行こうと思って、実際連れて行った。川の堤防に向かって、二人と一匹で道を歩いていたら、寺の住職の軽自動車と出会った。この人は毎月家にお経をあげに来る人で、ミチコさんにやたらと猫を飼うように誘惑して来る人だ。案の定呼び止められて、「ちょっと、ちょっと見て行って!」と言うので、何事かと思ったら、野良猫がまた仔猫を産んだのだ。すでに猫2匹飼っているミチコさんにまたもや猫を勧めてくるので、こちらは苦笑いするしかない。

 花火大会が行われる川の堤防に行くまでに出会った村の人は住職だけで、なんだか寂しいなあと思っていた。ミチコさんはたしか10分とか言ったが、もうその倍は歩いていた。花火大会の前には盆踊りをやるのだが、私の今住んでいる町では音楽ばかり鳴り響いて、踊っている人はわずかだった。だが、ここは、田舎は違った。最初こそ人はちらほらだったが、盆踊りが始まる時間になると、どこからこんなに人が集まって来たのかと思うくらい大人数になった。パリッとした浴衣を着て、散々練習を積んであろう有志の人たちがまず踊り始めた。すると、周りで見ていた観客が一人、二人と踊りの輪に加わって、見る見るうちに輪に吸い込まれた。終いには見ている人よりも踊っている人の方がはるかに多くなった。皆楽しんでいるのが見ていてわかった。

 盆踊りの開始は6時45分だったが、運悪くにわか雨に邪魔された。でも、会場のアナウンスでは、「上空にある雨雲が行くのを待ちましょう」と言うので、皆木陰で雨宿りした。皆の思いが通じたのか、やがて雨雲は消えて晴れ間が見えて来た。さあ、盆踊りの始まりだ。さすがに犬のマルプ―を連れてきたのはまずいと思い始めたが、ミチコさんは動じない。それもそのはず、マルプーは人間が大好きなので、大勢の人がいるので喜んでいる。かと言って、興奮するようなこともなく、ミチコさんに抱かれて大人しくしているのには感心した。花火のドカ~ン、ドカーンという爆音にも一切吠えることはなかった。知らない人から、「可愛いですね」とか、「大人しいですね」とか言われているので、こちらとしてはホッとした。

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