人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

『樹木たちの知られざる生活』で知る樹木の真実

お題「#新生活が捗る逸品」

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▲これは以前世界中でベストセラーになり、日本でも話題になった本が文庫になったものです。森林の大切さが叫ばれているのに、私たちはその本当の姿や役割をよく知りません。ただ漠然としたイメージばかりが先行しています。この本を読んだらすぐにでも森に行きたくなりました。

緑や海を求めて田舎に住みたいと考える人たちがいる

 新聞を読んだり、テレビを見ていると、最近はやたらと田舎に住みたい人達がいることに驚いてしまいます。田舎で育った私などは、とても住みたいとは思わないからです。その理由は店や病院が歩いて行ける距離にはなく、車が運転できなくなったら、極端な言い方をしたら「難民」とたいして変わらないからです。家族と住んでいても孤立し、誰も構ってくれません。たとえ、お金があっても、自由はお金では買えないのです。子供の頃、町の本屋へ自分ひとりで歩いてまんが雑誌の「りぼん」を買いに行ったことがありました。頑張って歩いたのですが、なかなか町まで着かなかったことを今でも覚えています。車で行けば、地元の人が言うには「すぐそこ」で、たった5分の距離なのにです。ですから、周りの人たちが田舎の自然に憧れる気持ちが全く理解できませんでした。

 最近知ったのですが、女優の中谷美紀さんは4年ほど前からオーストリアに住んでいるそうです。オーケストラの団員で音楽家の男性と結婚したためで、仕事の時だけ日本に来ています。中谷さんが住んでいるのは田舎で、当然近くに店があるわけでもないのですが、自然だけは豊富です。それでも今の暮らしに満足し、気分転換に散歩に行って、生えている草花を摘んできて花瓶に飾る、そんな日々が愛おしいそうです。考えてみると、外国の人たちは日本人と違ってそんなに便利さを求めてはいないのです。

 田舎に住むなんて考えられなかった私にも最近は少し気持ちに変化が起こりました。それはたぶん現在のようなコロナ禍にあっては旅ができなくなったからです。今のような状況でも、田舎ではなくても、歩いて行ける距離に森があったなら、一息つけるのではないかと思うのです。大きくなくてもいいのです、ちょっとした緑に溢れた公園でもあったら、気分転換ができるのではと考えるようになりました。都会であっても自然を感じられる場所があれば、遠出をしなくても、日常生活の中で森林浴を楽しむことができます。だから、もし住む家を自由に選べるのであれば、都心にあっても緑を感じられる家が理想です。

 そんなことを考えていたとき、本屋の森の中を彷徨っていたら、この『樹木たちの知られざる生活』に出会ったのです。本を読み始めてみると、目から鱗だったのは、「樹木も人間と同様に、痛みを感じ、言葉を使って、コミュニケーションを取ることができる」ことでした。樹木が発する言葉、自分を表現する手段は芳香物質、つまり香りです。この点では、人間も同じで、私たち自身の体臭が身の回りの人に無意識に語りかける役割を担っています。研究によると。パートナーを選択する際には人間の汗に含まれるフェロモンが最も重要な基準になるそうで、私たちは香りを使って秘密の会話をしていることになります。そして樹木にも同じ能力が備わっているのです。

 およそ40年前に観察された大変興味深い出来事があります。アフリカのサバンナでキリンはアカシアの葉を食べます。この大きな草食動物を追い払うために、アカシアはキリンがやってくると、数分以内に葉の中の有害物質を集めます。毒に気づいたキリンは別の木に移動しますが、隣の木ではなく数本飛ばして100メートルぐらい離れたところです。なぜ、そんな行動をとるのか。その理由がとても不思議で驚かされます。最初に葉を食べられたアカシアは災害が近づいていることを周りの仲間に知らせるために警報ガス(エチレン)を発散します。警告された木は、いざという時のために有害物質を準備し始めるのです。それを知っているキリンは警告の届かない木のところまで移動すると言うわけです。

 また森の空気を吸うことはとても健康にいいと誰もが考えます。実際に、樹木がフィルターの役割を果たしてくれるので森の空気は他の場所よりも澄んでいます。広葉樹や針葉樹が流れる空気に含まれる大小の物質を取り除いてくれるからで、その役目をするのは樹冠と呼ばれる巨大な面積を持つ葉の表面です。空気中の酸化物や有毒な炭化水素や窒素化合物などが、キッチンの換気扇のフィルターに付く油のように木の下に集まるからです。それから、特筆すべきことがもう一つあります。一般的に、森の空気は酸素が豊富に含まれていると考えられていますが、必ずしもそうとは限りません。酸素は光合成を通じて水と二酸化炭素から作られます。夏ともなると、人間が一日に必要としている、およそ一万人分もの酸素が作られる計算になります。だから、森を散歩することは酸素のシャワーを浴びているようなものです。でも、残念なことにそれは日中に限られます。夜は光合成ができないからです。

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