人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

フリーのイラストレーター

楽しい仕事と思ったら、意外にも問題だらけで

 いつもTBSラジオの「宮藤さんに言ってもしようがないんですけど」を楽しく聞いている。この番組は様々な職業の人たちの愚痴を聞いて、彼らが今何を思い、どんなことで悩んでいるのかを知ることができるので大変面白い。いや、面白いなんて言うのは軽率な言葉だが、ある意味その業界の現状を知ることは社会勉強でもある。この番組に出演する人は自分たちのどうにもならない状況を訴えたいだけで、問題解決を望んでいるわけではない。事実、番組は終始ユーモアでにっちもさっちもいかない現実を笑い飛ばすような形で進行する。笑っている場合ではないけれど、でもやっぱりありえない状況に何もできず笑うしかないのだ。笑えると言うことはまだ絶望していないことであり、希望の一筋、あるいは二筋くらいの光は見えているということ。それに、最も大切なのは、どんな職業の人でも自分の仕事が好きというか、何らかの誇りを持って仕事をしているということだ。

 先日のゲストはイラストレーターで、会社のような組織に属さないフリーで仕事をしている人たちだった。ひとりはイラストレータ―歴4年目の女性で、もうひとりは今年で8年目の男性でイラストを教える仕事もしていた。さっそく番組の冒頭から仰天してしまった、先の女性の発言があまりにも信じられなくて。それは「○○さん(女性の苗字)の自由に書いてもらっていいですよ」と言われたのに、作品を描いて持って行ったら「イメージと違う」!?と却下されて書き直しを命じられることがあるということ。女性の本音、いや誰でも思うことだが、そんなことを言うくらいなら、「早く言ってよ」となるのは当然だ。「好きなように、自由にどうぞ」と言う人に限って後から山のような注文を付けることが多い傾向がある。

 だから最近は発注者の「自由に描いてください」を鵜呑みにせずに、何か、なんでもいいから、頭に浮かぶイメージを提示してもらうようにしている。具体的なものでなくてもいい、単語のひとつでもいいから、ヒントになるものを出してくれるようにお願いする。明らかに自己防衛の手段である。少しでもトラブルから身を守るためにあれやこれやと戦略を考える。世の中を渡っていくのに必要不可欠な事項で、当然のことだ。

 さらに驚いたのは、仕事の発注先から、前もってギャラを提示されないことが多いことだ。ええ~!?頼まれる仕事のお金がいくらか分からないのにやるわけ、と私などは信じられなかった。聞いてはいけない雰囲気が業界全体にあるらしく、それが当たり前の世界だった。女性もイラストレーターとして駆け出しのころは特に聞けなかった。でも、最近は後進の人たちのためにも、変な常識を一掃するためにもギャラがいくらか聞くようにしているそうだ。

 それからまだある。それはイラストレーターの仕事の単価が年々下がっていること。宮藤さんも言っていたが、このような傾向はフリーランスの人たちに共通する課題だ。イラストレーターの仕事は書籍やパンフレット、機関紙と様々あるが、特にお金が潤っていない出版関係と言うか、書籍において「値下げ」が顕著だ。例えば本の表紙のイラストのギャラは、悲しいことに昔の本がよく売れていた頃から比べると値段が4分の1程度になっている。すこし考えてみれば、現在のような出版不況においてはそれも仕方のないことと納得せざるを得ない。

 だが、一方ではイラストレーターが「ずるい!?」と思わずにはいられないこともある。書籍のイラストには表紙と中面とがあって、当然表紙の方がギャラが高い。ある時「中面のイラストを表紙にも使いたい」と言われたことがあったそうだ。素人の私などは、表紙に使うのだからギャラは当然高いのだろうと思った。だが全然違った。中面のイラストを表紙に使う時は中面のギャラの半分、いや何十パーセントの金額になるのが普通なのだ。なんとも訳の分からないことになっている。当然二人共、こんな仕事は受けないようにしていると話していた。

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