人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

幻の紅葉祭り

今週のお題「赤いもの」

f:id:mikonacolon:20211109171258j:plain

▲スペインのフィゲラスにあるダリ劇場美術館。白い卵が人目を引き、壁にはパンの彫刻がある。NHKまいにちスペイン語テキストから。

お目当ての紅葉祭りは何処へいった?

 以前姉から「浜松に一緒に旅行に行こう」と誘われました。あれは兄の葬式の時で、火葬場からの帰りのバスの中でした。姉としては思いがけなく弟に先に行かれてしまったせいで、一度くらいは姉妹で旅行にでも行っておきたいと思ったのでしょう。姉が特に行きたいのは浜松城で、一泊で良いからと言うのです。それで私に旅行の計画を立ててくれるように頼んできたのです。仕方なく引き受けたものの、私は国内旅行にはほとんど興味がないので困り果てました。そう言えば、会社の同僚が父親が浜松出身で毎年有名な祭りで賑わう楽しい所だと言っていたのを思い出しました。

 ふ~ん、そうなら、たった一泊なら最高に楽しい旅行しなくてはと気合を入れました。まず、本屋に駆け込んで、旅行ガイドのコーナーで「るるぶの静岡版」を手に取りました。ペラペラ捲っていると、浜松の記事は確かにあったのですが、なんとたった2ページでした。これだけでは何一つわからないので、もっと情報が欲しいのです。それなら手段はあれしかない、つまりネットで調べるしかありませんでした。「浜松」で検索すると、主な見どころは浜松城とか、オルゴール美術館、浜名湖ロープ―ウェイなどでした。今回の旅行は私たち姉妹3人と兄のお嫁さんの4人で行くので、もしも迷うよなことがあったら大変です。いつもの自分ひとりの気ままな旅ではないのですから。私がちゃんと行動しないと、全員が右往左往してしまって、時間の無駄になってしまう、そう考えたら、余計に下調べに熱が入りました。

 それで、自分なりに旅行ノートを作って全員に渡すことにしました。一日目と二日目の予定の時間割を作り、まるで修学旅行のように旅のしおりを作るのです。それと見学する場所については必ず写真でどんなところかわかるようにしました。例えば、浜松城なら、ネットで見つけた写真付きの案内の記事をコピーして参考にしてもらおうとしました。100円ショップで買って来たクリアファイルに入れて渡したのは、事前に皆に情報を共有して欲しかったのです。その記事を読んで、浜松城は大きな公園の中に建っているのだと初めて知りました。そして、私たちが行く10月下旬はちょうど紅葉祭りが開催されるのでした。もちろんその頃は雑誌に載っているようなお約束通りの美しい紅葉が見られるにちがいありません。幸運にも黄色や赤の美しいグラデーションを背景にした浜松城を眺めことができるのです。少なくともその時は木々が燃えるような景色を見ながらうっとりするものだと信じて疑いませんでした。

 紅葉祭りなのですから、きっと大勢の人で賑わって、当然様々な食べ物の屋台も立ち並ぶはずです。それで浜松城を見学した後、紅葉祭りの会場で昼食を食べることにしました。実は私たちは偶然にも浜松城が眼下に見下ろせるホテルの部屋に泊まっていました。楽天トラベルのサイトで一日一組限定のお得なプランに申し込んだのです。それは18階のスイートに格安の値段でグループで泊まれるという願ってもないチャンスでした。その日私は朝早くから起きて、窓辺に立って公園の様子を眺めていました。紅葉祭りの準備で大勢の人が忙しそうに準備を始めるものだとばかり思っていたら、いつまでたっても誰一人来ませんでした。どう見ても何かが始まる気配はありません。それに周りを見渡して見ると木々がまだ青々としていて、紅葉祭りの舞台が整ってはいないのです。失望で頭を抱える私を見て、あとの三人はすべてを察したのか、何一つ文句は言いませんでした。今となってはまさに笑い話で、イメージを膨らませ過ぎて、現実とはかけ離れた夢を見ていた気がします。それで思い出したのは、浜松の観光案内所に紅葉祭りについて電話で問い合わせをした時のことです。あの時係りの人は確か「日にちはいつになるかわからない」と話していたのです。となると、あのネットの情報って一体何?となるわけです。

mikonacolon