人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

専業主婦の夫の家事

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主婦の友社『イギリス、本物のくつろぎインテリアを求めて』から。

俳優の平岳大さんが人生相談の回答者に

 私は新聞の悩み相談を読むのを楽しみにしている。世間から見れば、「こんなどうでもいいこと」や「何も気にすること無いのにと思えること」にでも懇切丁寧に回答者の方々が答えてくださるからだ。世の中を風切るように颯爽と駆け抜けている人たちには到底理解できないかもしれないが、実は悩みというのはデリケートな問題なのだ。私などはその回答の納得のいく素晴らしさに感心している。一通り読んで、そうか、そういうふうに考えればいいのかとか、そんな考え方もあったのかと目から鱗の時もある。

 さて、土曜日の新聞の別刷りに載っていた相談の回答者は俳優の平岳大さんだった。お悩みの主は30代の男性で、妻によく「あなたは家事も育児も何も手伝ってくれない」と文句を言われることが多いと言う。でも本人の立場としたら、「自分の方が朝から晩まで働き詰めで、妻より忙しいではないか」と言うのが本音のようだ。要するに自分はちゃんと家族を養うために仕事をしているのだから、家に帰ったときぐらい休ませて欲しいと言いたいだろう。それでこんなことを思う自分は今の時代においては間違っているのか、時代錯誤も甚だしいのだろうかと質問したいわけなのだ。

 今の時代は女は家庭、男は外で仕事というステレオタイプな考え方ではもうやってはいけないのが現実だ。何しろ生活費にお金がかかりすぎて、とても夫一人の給料ではやっていけないからと私の友人などは言う。相談者の男性は妻と子供を養っていけるらしい。だから、手伝わなければならないのかと聞いているのだろう。その質問に平さんは想像もつかないようなしゃれた考え方で答えてくれるのだ。私も意外だった答えを紹介する前に、まず驚いたのは、なぜ独身のはずの平さんが家庭の問題に答えるのかということだった。不思議に思って回答を読んでみると、知らぬ間に結婚されていて、3歳半の娘さんがいることがわかった。だから夫が家事を手伝うことは身近な問題で、平さん自身はどうなのだろうと興味津々で続きを読んでみた。

 「我が家は毎日私が皿洗いをしています」などと仰るではありませんか。まあ、なんと模範的な優しい夫なのだろうと一瞬さすがぁと拍手してしまった。でもそこに至った理由を聞いて仰天した。その原因はネットの片隅にあった記事で、「父親が皿洗いをする家庭の娘は、それをしない父を持つ娘より社会的な出世をする確率が高い」というものだった。それはフランスの研究結果をまとめたもので、平さんは物凄く衝撃を受けたというのだ。確かにそうでもしなければ、子供は皿洗いは母親の仕事なのだと思いかねない。父親は皿洗いなどしないものだと誤解してしまうかもしれない。

 それで平さんは娘の将来のために?皿洗いをするようになったのだが、ある日ふと不安になった。「皿洗いする自分に娘はきづいているだろうか」。皿洗いをする自分を娘の目に焼き付けなくてはと考えた。娘に食器の後片付けをさせて、泡だらけの手で食器を洗っている自分のところに運ばせた。そして食事を作ってもいない自分になんと「ごちそうさま」とまで言わせたそうだ。これはもう読んでいて「ちょっとやりすぎ!」と思ってしまった。こうなると、なんだかゲームみたいで平さんは楽しんでやっているようだ。考えてみると、こうやって作為的でも父親を娘に意識させることは、むしろとてもいいことだと思えてくる。娘さんにとっての平さんは仕事ばかりしている”影の薄い父親”ではないはずだから。最後に平さんからの相談者へのアドバイスは「英才教育の一環として、まずは皿洗いを始めて見てはいかがでしょうか」だった。

 平さんと言えば、忘れられないことがある。まだNHKラジオの英会話が大杉正明先生だった頃、平さんはゲストで出演された。その時の話のテーマは「私のアメリカ留学」でした。なぜアメリカに留学されたのですかという問いに「両親が共に有名俳優(平幹次朗と佐久間良子)で自分が俳優の〇〇の息子だとしか思われないことが嫌だった」と答えていたのがとても印象に残っている。だから、自分を個人として認めてくれる外国に行きたかったし、アメリカではだれも自分の事を知らなかったのでホッとしたそうだ。

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