人生は旅

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心に残った「ひととき」を選んでみた

はてなブログ10周年特別お題「好きな◯◯10選

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▲ネオ・ルネッサンス様式の現パリ市庁舎。NHKまいにちフランス語テキストから。

投稿は日常のたわいもない話ばかりではなくて

 私は新聞を3紙取っていて、中でも朝日新聞の投稿欄「ひととき」を読むのが日課です。「ひととき」は日常生活の中で自然と沸き上がって来る感情とか、身の回りで起こった出来事を発信する場でもあります。なので、読み手にとってはなんだそんなことか、とか、ふ~んで終わってしまう記事もあります。時にはクスッと笑って終わりですぐに忘れてしまう記事も多いです。でも記事を書いている本人は500字程度の文章に自分の想いをたっぷりと投入しているはずです。第3者がそれをどう受け止めるかは個人よってさまざまで、自由なところがまたいいのです。何の変哲もない話にも何かの気づきを貰えるとしたら、その人は小さい幸せを見つけたと喜んでいるかもしれないのですから。大きな変化がなくても、そんな些細なことで目の前がパアット明るくなる経験はものすごく貴重です。

 「ひととき」は日常生活と共にあるのですが、その中でも時には事件が起きることがあります。つまり、見ず知らずの方の記事に心を鷲掴みにされたり、感動したり、感情移入して泣いてしまったりすることがあるのです。思わず、何度も読み返してしまい、すぐさまハサミで切り抜いて張り付けておきたい、と思う記事に出会うことは喜びでもあります。そんな中から私の好きな「ひととき」10選を書こうと思います。

1.「父と本の話をしたいよ」 広島県福山市の清水俶子さん 78歳 主婦

  まず「夜中、ふと目が覚めて、涙がでた」という冒頭からもう惹きつけられました。父親は無医村の医師で、「川の流れを見つめる父の姿が蘇ってきた」とあり、その背中はすべてのものを寄せ付けないほど硬い板のようでした。ちょうど患者さんが亡くなられたときでした。父親が本好きで、自分も父親に似て本が大好きでした。学校の昼休みにも教室でずうっと本を読んでいて外で遊ばない子供でした。そんな生徒に業を煮やした先生に運動場に出されると、またそこでも本を読み耽っていました。そして、根負けした先生に「もう諦めた!」と言わせてしまったのです。どうやら清水さんは筋金入りの本好きのようです。今でも本がない生活は考えられないし、父親と本の話が無性にしたくなってしまう。普通なら「去る者日々に疎し」で父親のことなど忘れてしまうのに、清水さんは今でも父親が恋しいのです。最後の「どんな本を読んでいるのか知りたいよ、そして、本の話をしたいよ」は清水さんの心の悲鳴のように思えてきます。これほどまでに濃密な親子関係は正直言って、すごいと思うし、また羨ましくもあります。また意志の強い方に違いない清水さんは実際はどんな人なのだろう、とかこれまでどんな人生を歩んでこられたのかに興味津々なのです。

 

2.「6月の紫陽花は青がいい」 70代の男性 たしか職業は医師

  毎年6月になるともう四半世紀も前の淡い初恋、いいえ初恋の卵のような感情を思いだします。花屋の店先に並ぶ紫陽花を買って帰って、窓辺において眺めて楽しむのです。遠い昔清楚で可愛い女学生と一緒に道端で見かけた紫陽花を見ると、一瞬あの頃の自分に戻ってしまいます。当時は男女が付き合うなんてことが許される時代ではありませんでした。噂になって迷惑をかけるのが嫌で、自分から連絡するのをやめました。あのとき彼女が青い紫陽花の花を見て、「きれいね」と言ったのが忘れられないのです。世間的にも成功を収めたかにみえる男性にこんなロマンチックな一面があるなんて、他人の秘密を覗き見しているようで楽しくなります。

 

3.「ぐりとぐらの絵本」 50代の主婦

  誰でも知っている絵本「ぐりとぐら」にはホットケーキを焼く場面が出てきます。2匹のネズミが自分たちの身体よりも何倍もでかいフライパンで、かいがいしく作業をします。この主婦の方は子供が小さい頃に歌を歌ってその場面を読み聞かせたと書いていました。♬ぐりぐら ぐりぐら♬と何度も何度も繰り返していたそうですが、実際には絵本には歌など載ってはいませんでした。ところが、大学生になった息子さんたちはすぐに小さい頃のことを思いだして♬ぐりぐら ぐりぐら♬と歌って見せたのだそうです。まさに”三つ子の魂百まで”で母親の自分はびっくり仰天したのでした。

 

4.「AIスピーカーと孫」 60代の主婦

  60代の夫婦は普段の生活の中にAIスピーカーを取り入れて暮らしていました。とても便利で快適なので重宝していました。ある日5歳の孫娘が遊びにやってきました。何でも質問すると答えてくれるAIスピーカーもこの女の子にはタジタジでした。なかでも「花火って何?」という質問をしたとき、その答えに爆笑しました。万能なはずのAIスピーカーが「たまや~、かぎや~」と叫んだからです。

 

5.「千円払って自由に」 70代の主婦

 夫婦で年金生活をしている場合、現役ではないのだから夫婦は平等であるべきだとこの方は考えています。ある日、彼女は家に友だちを呼ぼうと思いました。その場合、どうしても夫のことが気になります。それで千円払って夫に「どこか外でお昼を食べてきて」と頼んだのでした。そしてこう付け加えたのです、「あなたもいつでも言ってね、そしたら私も出て行ってあげるから」。これを読んだ私は、「そんなことがありえるね」と目から鱗が落ちました。

 

6.「叔母の遺品を整理したら」 50代の女性

 これは先日ブログの中で取り上げたのですが、高級品だとばかり思った叔母の着物が、よくよく見たら安物だとわかって仰天した話です。女性が勝手に誤解していたのですが、それより素晴らしいのは叔母さんの生きざまです。

 

7.「若い彼らを見守りたい」 70代の女性

 自分の住む家の近くにベトナム人の若者たちが住むアパートがありました。偶然通りかかると、彼らはタバコを吸っていて、吸い終わると吸い殻をその場に捨てるのです。私はてっきりそれが嫌で文句を言いたいのかと思ったら、全く違いました。すぐに空き缶で吸い殻入れを作って持って行き、「これからはこれに入れてね」と手渡したのです。すると、彼らは素直に女性の言うとおりに吸い殻を空き缶に捨てるようになりました。いつの間にか、話をするようになり、自分にできることがあれば、少しでも彼らの役に立ちたいと思うようなったのです。

 

8.「野良仕事に精を出す」 83歳 主婦

 83歳にして畑仕事に勤しみ、自分で作った野菜を市場に卸しています。隣町にある畑まで、自転車で片道30分の距離を毎日通っていますが、全く苦にはなりません。実家を訪ねて、94歳になる叔母と話をしたら、「もう年だから、あっちへ行きたい」などと言われて寂しくなってしまいました。コロナの影響なのか、でも自分は「もう死にたいだなんて思ったこともないのです。

 

9.「忘れることはいつも悪者だった」 50代 主婦

 思えば、子供の頃からやたらと忘れてばかりで叱られたり、辛い思いもしてきました。でも最近気が付いたのです、忘れることも悪い事ばかりではないと。考えてもみてください、辛い思い出や嫌な出来事をすっかり忘れられたから、私は今のうのうと生きていられるのです。だから私は人に比べて忘れっぽいことをそんなに負い目に感じなくていいのです。

 

10.「人生百年時代 先取り」 72歳 女性 薬剤師

 長年一人暮らしだった祖母が99歳で亡くなるまで、10年あまりを一緒に暮らしました。戦前をアメリカで過ごした祖母の生き方は他の人とは一線を画していました。年齢からは想像できないほど元気で、同居生活は驚きの連続でした。趣味はパチンコで、ベッドではアクロバットまがいのストレッチを欠かさなかった。大声で発声練習するのも日課でした。どれもボケ防止だったのだと今なら理解できます。祖母を見習って私も「こんな自分想像したことない」と思える日々を過ごしています。

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