人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

家に籠る彼女のこと

朝日新聞に連載されていた「オトナになった女子たちへ」から。

家から一歩も出なくても平気、いったい何を?

 先日の朝日新聞に連載されていた益田ミリさんのエッセイのタイトルは「風呂上がりのお楽しみ」だった。益田さんの場合は冷蔵庫からキンキンに冷えたビールを取り出して一杯やりながら、ユーチューブを見ることだった。そうやってダラダラしながら、一日の終わりを迎えるのが日課になっているそうだ。水を差すことを承知で言うなら、寝る前にスマホを見るのは避けた方がいい。スマホの光が安眠を妨げてしまうからだが、お楽しみを邪魔するような無粋なことを言うのはやめておこう。

 コロナ禍でよく見ているのは、「部屋の片づけ」!?だったり、料理の動画、あるいは「ホテルのデザートビュッフェ」とジャンルが多岐にわたっている。「部屋の片づけ」の動画は片づけ上手な人の部屋を眺めて感心するのが楽しいらしい。それに料理の動画に至っては手際よく調理する人の手先を見ると妙にリラックス?というから発想がユニークだ。当方が勝手に思うのは、夜寝る前に「デザートビュッフェ」の動画は寝た子を起こす様なもので、瞬時に腹が鳴ってしまいそうだ。せっかく胃袋が脳に「今日はこれでおしまい」と信号を送って「本日は食べるの終了」となったのが台無しになりかねない。つまり、美味しそうなデザートを見せつけられて、食欲が復活してしまうのだ。ひとたびそうなったら、食欲が睡魔に打ち勝って、眠れなくなってしまうのがおちだ。だから、寝る前に食べ物の動画は見ないようにしている。それが身のためで平安な夜をすごすための秘訣だ。

 旅好きなミリさんは、旅の動画もよく見ると書かれているが、それは漫画のネタにもなるようで一石二鳥なのだろう。以前週刊文春に連載されている『沢村さんちの楽しいおしゃべり」でもネットで検索して楽しんでいる様子が描かれていた。世のなかには実際に現地に行かなくても、動画を見ているだけで、行ったつもりになって楽しめてしまう幸福な人がいるらしい。仮想空間でのアバターなんて、大金をかけずに旅行に行けてしまうのだから十分理にかなっている。

 ミリさんがユーチューブ好きだとわかったら、ふと会社に居るアルバイトの女性のことを思い出した。その人は30代後半で、親と同居しているから今のところは生活の心配はない。スタイルもよく、綺麗な顔立ちなので、過去には交際を申し込まれたこともたびたびあった。なのに、「あの人は嫌」とか「タイプじゃないから」と何かと理由をつけて断った。結婚するとかしないとかの前の付き合うという段階でもう予防線を張ってしまうので、彼女には彼氏がいない。それ以前に男性に興味がないのではないだろうか。彼女と10年以上一緒に仕事をしている割には、誰も彼女については詳しいことは知らなかった。

 ディズニーランドにたまに遊びに行くこと、ビーズの音楽が好きなこと、両親と一緒に家飲みをしょっちゅうしていること、それぐらいのものだ。それと外出が嫌いで、週末は家に籠って過ごしても全然苦にならないらしい。聞きにくいことを平気で聞ける同僚が彼女に「いったい家で何をしているの?」と意地悪な質問をしたことがある。同僚としては自分たちには家庭があって夫も子供も居るので忙しい、だが、一方のあなたはご飯はお母さんが作ってくれるし、洗濯だってしてくれるのだから閑でしょう、と言いたいのだ。だが同僚の真意は他のところにあった。つまり、えり好みしないでさっさと結婚して家庭を持った方が身のためだと言いたいのだ。今のままでは将来が不安じゃないのと暗にほのめかしていた。

 なんだかんだ言っても所詮は大きなお世話だったし、彼女は気にもしなかった。彼女の父親は将来のことを考えて、国民年金だけでなく、自営業者だけが加入できる国民年金基金にまで入らせていた。彼女はとても父親を信頼しているようで、株の配当金もたまに貰うことがあると話していた。彼女は歳のわりには無邪気で、ポケモンGOが流行ったときは夢中になっていた。それで、あの「いったい家で何をやっているの?」という質問の答えがわかった気がしたのだ。もちろん想像の域でしかないのだが、おそらくスマホでユーチューブでも見ているのではないのか、とミリさんのエッセイを読んだら思えてきた。あれは時間を潰すにはもってこいの物だから。別名では時間泥棒ともいうが。でも現実には陰で一生懸命、株式投資の勉強でもしているとしたら、それはそれで面白い。

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