人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

インターネットの恩恵

はてなインターネット文学賞「わたしとインターネット」

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 当時から見れば夢のようで、今となっては当たり前に

 インターネットが現在のように全盛ではなかった頃、個人旅行をするためには労力と手間がかかりました。当時私が一番頼りにしていたのはエイチ・アイ・エスで、他の大勢の人たちと同様に航空券を買いに行きました。店のロビーは順番待ちの人たちで溢れかえっていました。人生で初めての一人旅で、右も左もわからないので、係りの人の言われるままに航空券を選びました。ただ、格安航空券で安いのは乗り継便だからで、知らない空港で果たしてうまく行くかどうか不安でした。たしか、オランダのスキポール経由の便だったと思うのですが、KLMオランダ航空に電話をかけて聞いてしまいました。そしたら、誰にでもわかるようにサインがあるし、日本人の係員もいるから大丈夫だと言われて安心したのです。実際現地に行ったら、その通りで乗り継ぎはスムーズでした。

 当時はガイドブックに旅行者の体験記が載っていて、次のようなコメントもありました。「エイチ・アイ・エスで航空券を買ったのですが、機上で初めて自分が乗ったのが乗り継ぎ便だとわかりました」。どう考えてもありえないことです。こんな冗談としか思えない、信じられないような話に仰天してしまいました。やがて、航空会社のサイトから自分でチケットが買えるようになったのはインターネットのおかげでした。最初はやはりドキドキしましたが、今では慣れっこになり当たり前の日常になりました。

 列車予約にしても、当時は旅行会社に依頼するしかありませんでした。フランスを旅行するためにユーレイルパスは買ったものの、それぞれの区間の列車には座席指定券を買わないと乗れません。それで旅行会社に頼むと、彼らは商売なので、1区間につき2千円の手数料を要求しました。いくら何でも6,7千円のチケットに2千円は高すぎるだろうと内心思いました。それでも買わないことには前には進めません。旅行自体ができなくなってしまいます。さらに、通信費と称して千円まで取られて、何とかもっと安く列車に乗る方法はないのだろうかと考えていました。

 それからも相変わらず旅行会社を利用しながらも、彼らのやり方をずうっと不満に思っていました。ところが、ある時一つの転機が訪れたのです。それは私が依頼したウィーンからスロバキアの都市間のチケットのことで、当社では扱っていないと彼らは断ってきたのです。確かに線路はあるのに、彼らは引き受けてはくれません。ほとほと困り果てました、旅行の計画は立てたのに乗る列車がないとは!そんなとき、今はもうお役御免になった感のあるトーマスクックの列車時間表を見ていたら、各国の国鉄駅のURLが載っていました。そうだ、直接サイトにアクセスして買えばいいのだと気付きました。その頃は英語版がなくて、ドイツ語版しかありませんでしたが、単語は辞書で調べたら意味はだいたいわかりました。一番感激したことは、オーストリア国鉄がわずか2ユーロの手数料で書留で自宅までチケットを届けてくれたことでした。ある日郵便局の人が「書留です!」と持ってきたのは、ドラマで王様が手紙に使うような封印が押された厚めの封筒でした。カッコいい飾りのついた封筒に思わず見とれてしまいました。

 この話にはまだ続きがあって、届いたチケットは私が頼んだ日付とは残念ながら違っていました。でもそのおかげで、私はドイツ語でオーストリア国鉄の職員と何度もメールでやり取りすることになりました。少しかじったことのあるだけのドイツ語で必死になって自分の言いたいことを伝えようとしました。その結果無事に欲しかった列車のチケットを手にすることができました。だから、インターネットよ、ありがとう、本当にお世話になりました、と感謝しているのです。

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