人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

ジェーンとキツネと私を読んで

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 誰も友達のいない学校は苦痛?

 この本はカナダのイラストレーターのイザベル・アルスノーが絵を担当したグラフィツクノベルです。つまり小説に挿絵を付けたのですが、この作品でカナダ総督文学賞を受賞しています。絵本とはまた違った味わいがあり、ほとんどのページがモノクロのイラストで描かれていています。10代の繊細な少女の心模様が伝わってきて、クラスのみんなから無視された経験のある方ならきっとわかるはずです。ほんの些細なことが原因だと思うのですが、全然平気ではないのに、平気な振りをしなくてはならないのは大変なことです。

 この本の主人公はエレーヌという女の子なのですが、どうやら母子家庭のようなのです。お母さんは、一生懸命働いて家に帰って来ると、夕食の支度や洗濯で忙しく、行きつく暇もないのです。それなのに、エレーヌのドレスを作ろうと夜中にミシン掛けをしています。エレーヌには部屋から聞こえてくるミシンの音がお母さんの悲鳴のようにも感じるのです。でも作ってもらったドレスは、なぜか自分の欲しかったものとは違う気がするのです、そんなことはとてもお母さんには言えないのですが。おそらくエレーヌは学校に行きたくないのですが、どうしてもだめな時はジェーン・エアの世界に逃げ込みます。

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人が生きていくには戦術というものが必要

 エレーヌは「私にはツタみたいな想像力があるのに、悪口には言い返す言葉が見つからない」と嘆くのです。毎日繰り返されるある生徒からの中傷に悩まされるのですが、一方で生きていくためには戦術が必要かもと気づき始めるのです。このお話ではいじめと言っても無視したり、言葉のいじめであって暴力はありません。そうはいってもそんな学校で1日の大半を過ごさなければならないのは辛すぎます。人の心を突き刺す言葉は容易に見つかります。例えば太っていることを馬鹿にしたり、実際にそんなに太っているわけでもないのに、自分の気になっている弱点を突かれて攻撃されてしまうのです。そんなエレーヌがカナワナ湖の4泊の英語合宿に行かなければならなくなりました。

エレーヌにも変化が訪れて

 湖に行くバスに乗り込んだエレーヌは早速彼女なりの戦術を使います。集中しているふりをして本を読み続けるのです、友だちがいなくてもへっちゃらだと皆に想わせるためにそうするのです。寂しくてつまらない気持ちを悟られないためです。現地に着いてみると、自然と友達がいないもの同士でテントのグループができました。知らないもの同士で最初から気軽に話せないので、エレーヌは荷物の整理に忙しいふりをしてやり過ごします。ふと周りを見たら、みんなも同じことをしていたので同じきもちなのでしょう。一人でどうにかこうにか過ごしてたエレーヌにもある変化が訪れます。それは合宿の最後の日に偶然にテントにやってきた女の子と話をしたら、ものすごく気が合うことがわかったのです。エレーヌに友達ができて、世界がキラキラ輝きだしたのです。もうひとりではなくなったのでした。それに人の悪口も、気にしなければ悪口ではなくなるのだと言うことにも気づき始めたのです。

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