人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

大好きだった、からだ巡り茶

今週のお題「好きなお茶」

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マドリードにある下院議事堂。NHKまいにちスペイン語テキストから。

コロナ禍で都心から足が遠のいて、飲まなくなって

 私の好きなお茶、と言うよりも、好きだったお茶はペットボトルの「からだ巡り茶」でした。何年か前にはテレビでCMもやっていて、健康的なお茶の登場ということで話題になりました。高麗人参、霊芝、ドクダミ等の9種類もの東洋素材に加えて、緑茶、ウーロン茶、プーアール茶、黄茶といった4種類のお茶がブレンドされているとラベルには書いてあります。いかにも身体によさそうで、飲み続けたら健康になれるのではと一瞬錯覚してしまいます。では、いったいどんな味なのか、問題はそこです、飲んで美味しくなければ誰も買わないのですから。私も興味津々で買って飲んでみました。

 実はラベルに書いてあった「ウーロン茶ブレンド」という文字が気になっていました。なぜかと言うと、ウーロン茶のあのどんよりとした味が苦手だったからです。よく居酒屋に飲みに行って、「私はお酒が飲めないから、ウーロン茶にします」という同僚を横目で見ながら、「あれを飲むくらいなら水の方がまだまし」と心の中で呟いていたのです。さて、からだ巡り茶を恐る恐る飲んでみると、幸運にもウーロン茶の味はしませんでした。ただ、それが何なのかはわかりませんでしたが、ある茶葉の味が尖っていて、きつすぎて、鬱陶しいと感じる味がしました。はっきり言ってとても美味しいとは思えなかったのですが、何日か経つとその鼻に突く味が何だか懐かしくなりました。それはあのコカ・コーラが最初はどうにも薬臭くて、到底飲めたものではないとさえ思われたのに似ています。要するに、あの癖のある独特な味を溜まらなく美味しいと感じ始めていたのです。

 濃くて、独特な味に病みつきになり、それまで飲んでいた緑茶が物足りなくなりました。緑茶が薄くて、ただの色付き水としか思えなくなったので、もうからだ巡り茶しか飲まなくなりました。当時は世の中は健康ブームで、万人に好まれていたのは爽健美茶でした。味に癖がなくて、飲みやすいので子供から大人まで誰にでも人気がありました。それと一線を画していたのがからだ巡り茶で、ブームが終わるとCMはもちろん、自動販売機からも、スーパーの店頭からも姿を消したのでした。でも、相変わらず置いている店はありました、それが都心にある一軒のスーパーでした。その店に行けばからだ巡り茶の小さなペットボトルが買えました。コロナが流行るまでは都心に行くと必ず店に寄って買うのが習慣になっていたのです。

 ところが予期せぬことは起きるもので、都心には近づかないほうがいいそうで、スーパーに行けなくなりました。突然からだ巡り茶はもう飲めなくなりました。その店は肉の質が良くて値段が手ごろなこともあって、大変人気があるスーパーでした。私は今まで食べていた肉を諦め、大好きだったからだ巡り茶を諦めることにしました。「これからどこへ行けばいいのだろう?」と途方に暮れていたら、ふと以前目にした場面が頭に浮かびました。それは東京で暮らしていた頃のことで、原宿にここはもしかしてパリ?と錯覚してしまうようなカフェがありました。パン屋さんの店先にテラスがあってそこで外国人たちがお茶を飲んだり、おしゃべりに花を咲かせていました。外国人は呆れるほどに店内よりも、圧倒的に外が好きなのです。暑くても、寒くてもテラス席に陣取って、長いことおしゃべりを楽しんでいました。

 ところがある日そのカフェが突然郊外に引越すことなりました。閉鎖されたカフェの店先に貼られていたのは、無数の閉店を惜しむ声が書かれたメモでした。その中に「明日からどこへ行けばいいのだろう、行くところがない」との悲鳴とも言える嘆きの声がありました。

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