人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

「かわせみのマルタン」で自然観察

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▲信じられないことですが、この本は1965年に福音館書店から出版されたものです。55年の年月を経て運命的に出会えたことは奇跡としか言いようがありません。

気が付けば、森の中で谷川の風に吹かれて

 都心の大型書店が本の森なら、町の小さな古本屋は本の宝箱と言えるのではないでしょうか。そんなことを思うのは、絵本の「かわせみのマルタン」に出会ってしまったからです。その本は目立たなくて、たくさんの絵本と一緒に平積みしてありました。ステレオタイプな見方をすれば、「どうせ、鳥のお話だろう」と思う程度です。たいして興味を引くタイトルでもないので見過ごしてしまいます。あの時も帰り際についでに手に取ったのです、この「かわせみのマルタン」を。

 ところが、本を開いて実際に読んでみると、そうなんです、この本は他の絵本とは一線を画していて、まさに読む自然観察日記なのです。魅力的なさし絵を楽しみながら、読み進むにつれて、いつしか森の中の小川のせせらぎが聞こえてきます。川を渡って心地いい風も吹いてきました。ちなみに、この本の中身はこんな感じです。

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▲この絵本の著者が空よりも海よりも青いというかわせみが釣りをしているところ。

自然界の生き物の生態が面白い

 この絵本の主役はもちろんかわせみなのですが、他の生物の命の繋ぎ方、つまり獲物を捕る方法がとても興味深いです。例えば、マスたち、谷の入り口の滝の下には岩の滝つぼがあり、そこはマスたちの寄合い所です。彼らはそこでじっとおとなしくしていて、眠っているかのように見えます。それに騙されてはいけません、彼らは獲物を待ち伏せしているのです。容赦なく襲い掛かり、目の前を通り過ぎる物は絶対に逃しません。そして、二本のポプラがある小島を根城にしているカワウソは、昼間ではなく、なんと夜に探検に出かけるのです。眠っている魚たちに襲いかかるためです。寝込みを急襲されたら、おちおち寝てもいられないではありませんか。安心して眠ることができるのは有難いことなのだと思い知らされます。

かわせみに心を奪われる

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▲「空よりも青く、絹よりもつややかな」という形容がぴったりのかわせみの挿絵。かわせみは愛情深く、狩りのときはもちろん、いつでもパートナーと一緒で仲がいいのです。それにしてもサファイアブルーが美しいです。

 さて、それまで自分の王国だと密かに思っていたら、どこからかかわせみがやってきて占領されてしまいました。ウナギの子が川を上って来るのに見とれていた隙にです。「ガラスのように透き通った、指ほどもない小さな冒険者たち」の想像もつかない、果てしない旅に想いをはせていて、気づかなかったのです。

 かわせみのマルタンは賢く、魚たちの暮らしをよく承知していて、その習性を利用して釣りをします。「雑魚たちが川岸近くの砂でごく浅くなっているところに、ギッシリとかたまっていることも知っています。そういうところは水が他よりも暖かいし、浅いので、スズキがやってきて雑魚に飛び掛かることもないからです。そいつはトラのように恐ろしい魚なのです」。

かわせみの巣は空に近い所ではなくて

 不思議なことに、かわせみは空に近い木の枝ではなくて、なんと地面に穴を掘って巣を作ります。一羽が穴を一生懸命掘り続けると、もう一羽は掘り出されたものをどこかに運んでいきます。一日中、その作業を繰り返して、夫婦で協力して共同作業で完成させます。その穴は1メートル以上にも及ぶトンネルです。どうやら卵を産む季節がやってきたようで、マルタンは魚を捕って巣に運ぶ作業を繰り返すのです。

 でもある日、魚を捕るのをやめたので、不思議に思っていたら、今度はハエやトンボを捕まえ始めました。ヒナが孵ったのです、「赤ん坊は魚では育てることはできません」。そのままではヒナに食べさせることはできないので、無視の羽根はむしり取ってやらなければなりません。万一のどに詰まりでもしたら大事な子供たちが死んでしまいますから。土の中ではかわせみの子は黒いトゲが生えていて、醜い様子をしています。でもひとたび外に出て日の光を浴びると、黒いトゲは輝くようなサファイアブルーに変わると言うのです。まさに自然の神秘です、こんな奇跡に出会えたことは幸運としか言えません。

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