人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

どうしてそうなるの?

認知症が疑われる人と付き合うと・・・

 昨日田舎に居る義姉のミチコさんに電話をした。台風の影響が気になったからだったが、意外なことを聞かされて考え込んでしまった。それはミチコさんが高齢者であるにも関わらず、車の運転もできるし、普段から老いをあまり感じさせない人だったからだ。その話と言うのは、ある日の夕方、突然かかってきた二番目のお兄さんからの電話から始まった。ミチコさんは5人兄弟の末っ子で、兄が4人いる。一番上の兄は高齢ということもあり、足が悪くなって歩けなくなってしまった。今は高齢者施設に入っているが、あとの3人は元気で、車の整備販売会社を兄弟で営んでいた。

 その二番目の兄が仕事の帰り際に三番目の兄から「今日は俺の誕生日なんだよ」と聞かされた。人付き合いがよく律儀な兄は、誕生日だと知ってしまったからには無視はできないと思った。それなら皆で寿司でも食べに行こうかとなって、ミチコさんに連絡してきたのだ。こんな誘いがあるときはいつだって二番目の兄の奢りだった。ミチコさんには断わる理由はなくイソイソと支度をし、ルンルン気分で車を運転した。

 寿司屋に行くと、もう皆が集まっていて、それぞれ妻や子供を連れてきていた。店の座敷は狭いので、皆が一緒には座れない。二番目の兄とミチコさんはカウンターに座ることになった。寿司を食べながら、談笑して楽しいひと時を過ごしたが、その後事件が起きた。それはいざ帰ろうとしたら、その日の主役である三番目の兄が家のカギがないと騒ぎだしたのだ。上着のポケットを探ってみてもない。いつも持っているカバンにも入っていない。ちゃんとカギをかけてきたのだから、無いこと自体が信じられないのだ。実を言うと、最近この三番目の兄の行動はちぐはぐで、すこし認知症が進んでいるのではと皆感じていた。しかも、この時は家の改築という事情もあって、一人でアパートに住んでいた。そのアパートのカギを失くしたのだ。

 さて、どうするか、カギが無いのにアパートに帰るわけにもいかない。タイミングが悪いことには、妻と子供は先に帰ってしまっていた。後に残った全員で思案していると、当の本人が信じられないことを言った、「とりあえず、アパートに帰ればなんとかなる」!?普通に考えれば、どうにもならないことは明らかだ。皆から「帰ってどうするの?」とか「カギがなければ家に入れないよ」と説得されても、本人はそう主張して譲らない。それで、当人の言う通り、皆でアパートに行くことにした。だが、予想通り、カギも落ちていないし、何とかなる幸運にも恵まれなかった。

 それで、二番目の兄が「家族に電話して合いカギを持ってきてもらったら」と提案した。だが、三番目の兄が電話しようとするが、携帯が見つからない。携帯もどこかで失くしたらしい。結局、二番目の兄が家族に連絡したので、無事騒動は解決した。実を言うと、携帯が無くなった件についてはミチコさんも関わっていた。いや、その時携帯を持っていたのはミチコさんだった。寿司店の座敷で帰ろうと皆が席を立った時、座布団の隙間に携帯が挟まっているのをミチコさんは見つけた。その携帯が自分のと瓜二つだったために、「あれ、あんなところに置き忘れている」と勝手に思い込んだ。ちゃんと自分のはバッグの中にあるのにねえ。自分のに間違いないと思った瞬間、ミチコさんはその携帯をバッグの中にポイ!と放り込んだ。こんな時、普通は自分の携帯があるかどうかを人は確かめるものでしょうに。それによくよく見れば、自分のと他人の携帯の区別ぐらいできるはず。その時のミチコさんの頭の中ではそんな常識も働かなったらしい。そして、自分がやったことさえケロリと忘れていたのだ。

 ミチコさんは「自分でもショックで仕方がない」と歎いた。それを聞かされた私はもっと衝撃を受けた。”老いとは無縁”だと信じ込んでいた人にそんな信じられない兆候が表れたのだから。それとは別にカギの話に戻ると、未だに見つかっていない。かと言って部屋の中にもないので、カギはどこへ行った?と謎は深まるばかりだ。

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