人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

クスクスと家族団欒

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たわいない会話に幸せが溢れている

ヴェネツィア映画祭で審査員特別賞に輝いた映画「クスクス粒の秘密」を見ました。初老の男性スリマーヌが主人公なのですが、彼の元妻と子供たち家族とのクスクスを囲んでの団欒が実にいい雰囲気なのです。彼らはフランスの港町に住んでいるのですが、チュニジア移民なのでやはりクスクスがソウルフードなのです。クスクスというのは硬質小麦であるデュラム小麦を粉にし、水分を含ませ、そして粒状にしてから蒸して乾燥させたものです。つまり、クスクスは乾燥パスタの原料と同じなのです。そしてクスクス料理というのは、粒粒のクスクスを蒸して、肉や魚、野菜などを煮込んだものを上からかけたものをいうのです。毎週日曜日に実家に集まり、母の自慢のクスクスをほおばりながら、なんてこともない、たわいもない会話に花が咲くのがいつもことです。彼らの食欲はとどまることを知らず、みんな黙々と食べ続けて気持ちいいくらいです。

家族団欒は死語になりつつある

私自身は、ひとつの家庭料理を大勢で、それも家族や親せきで味わったのはいつだったのか思い出せません。近頃は家庭にお客さんが来ることがなくなり、手料理をふるまうということがなくなりました。私自身も昔は家にお客さんが来るのが嬉しくてしようがない時もあったのです。今はほとんど外食で済ませてしまい、自分で料理を作ることがなくなりました。日本人はもともと外国人に比べると家に人を招くことが極端に少ない国民らしいです。私はロシアが好きなのでNHKのロシア語の講座を聞いているのですが、その中でパートナーの男性がそのように発言していました。ロシア人はよく人を家に招いておしゃべりに熱中して楽しむようです。日本人はもっと人を自分の家に招いて人生を楽しんだ方が幸せになれるというのです。

確かにロシアでサンクトペテルブルグからモスクワへの寝台車に乗った時も、同じ席に座った男性たちは初対面なのに握手してすぐに打ち解けていました。私たちが寝る用意をし始めると、話し足りないのか二人でコンパートメントを出て行ったのです。女性だってそうなんです。見ず知らずの3人の女性が寝台車に乗り合わせたら、日本人なら一言も会話をすることなく目的地に着くのが普通です。でもロシア人は3人でいつしか世間話を始めてしまうのです。それぞれ持ってきたサラダやソーセージを出して食べながら、スマホの写真で盛り上がったりするのです。それほどロシア人は人生を楽しむことに貪欲で、人とつながろうとするのです。

新しい家族が助けてくれる

さて、話を映画に戻しましょう。スリマーヌは船上レストランを始めようと試食会を企画します。資金が足りないので銀行の融資の許可が下りないし、市役所にも認めてもらえません。だから大勢のお客を招いて試食会を成功させようと必死なのです。ここでも文化の違いなのか、夜の9時から始まって、日本より2~3時間遅めです。大体がフランスでは誕生パーティーだってそれくらいの時間ですから普通です。残念なことに、事態はスリマーヌの思惑とは反対にうまくいかず、会場にクスクスが届かないのです。客たちが苛立ち始めたそのとき、彼の新しい家族の妻と娘が大活躍してくれるのです。

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