人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

残り物には福がある

今週のお題「最近あったちょっといいこと」

f:id:mikonacolon:20211206191207j:plain

いつも私を待っていてくれる、最後の一つ

 他人にはどうでもいい事でも、当の本人にとって切実なことはいくらでもあります。だからそのたわいもない?問題が解決した時には「ああ、よかった」となるのです。私がこれから書こうとしている出来事もそんな類の話で、自分だけの「ちょっといいこと」に当てはまります。先日、真夜中に目が覚めたとき、すぐに自分の身体の異変に気づきました。布団の中がぐっしょりと濡れていて、もちろん着ていたパジャマもビショビショでした。額からは玉の汗がしたたり落ちて、思わず予想外の寒さに身震いしました。それでも布団から出たくないのですが、このままでいたら絶対風邪をひいてしまいます。それで仕方なく起きて、下着からパジャマまですべて取り替えました。着替えたら気持ちがよくなって、ホッとしたのか朝まで寝てしまいました。

 さて朝起きたら、外は雨で洗濯物はその日のうちには乾きそうにもありません。その時初めて、自分がパジャマを2枚しか持っていないことに気が付きました。つまり夜寝る時に自分が着て寝るパジャマがないのです。まさか寝汗をかくなどという不測の事態を予想したことはありませんでした。実を言うと、以前流行っていた断捨離に嵌って、物はできるだけ少なく持つべきと考えていて、2枚でも多いと感じていたのでした。理想は1枚だけで十分なのですが、現実は何が起こるかわからないので、1枚だけでは心もとないのです。別に熱があるわけでも、具合が悪いわけでもないのに、なぜだか寝汗をかいてしまうことはたまにあります。その時はたいてい原因など追究せず、わからずじまいで済ませてしまうことが多いです。

 考えてみると、寒い冬なのに結構な頻度で汗をかくことはあります。電車に乗ったら、暖房が効きすぎていたり、あるいは歩いていたら自然と身体が温まって、思いがけなく汗までかいてしまうこともあります。だから本音を言えば、着替えは多くあった方がいいのです。ただこれは少ない物で快適に暮らすのを身上とするべきミニマリストの意見とかけ離れているのです。

 話を元に戻すと、「着るパジャマがない、大変だ、買いに行かなきゃ」と慌てた私は近所のスーパーに走りました。私の頭の中にあったのは、数日前に服飾雑貨コーナーで見かけたオフホワイトのパジャマでした。それは以前売り場にあるポールに押し合いへし合い掛かっていたいたツルツルですべすべの生地のパジャマの残り物でした。手触りはまるでベルベット、でも実はただのポリエステル100%の偽物ですが、これが頬をスリスリしたくなる誘惑にかられてしまう優れものなのです。襟もついていて見るからに暖かそうで、その時ふと「買おうかなあ」という気持ちになったのですが、家に2枚もあるから必要ないと判断しました。そんなパジャマがなぜか一つだけポールにかかって、売れ残っていました。襟がない同じような種類のパジャマがたくさんある中でその最後の一つがやたら目立っているので、私としては気になって仕方がありませんでした。

 だからもしパジャマを買うなら、あのオフホワイトの頼りなげなクマの絵柄が付いたあれしかないと思いました。スーパーに向かう道すがら、あれはもう売れてしまったのではないかとか、もしそうなら他の物を買えばいいなどという頭の中をいろんな考えが駆け巡りました。実際に売り場に行って見ると、幸運にもちゃんと最後のひとつはそこにありました。まるで、「あなたが来るのを待っていたんですよ」と言わんばかりにです。でも考えてみると、あんなにたくさんあった商品の中から一つだけ売れ残っているということはお客さんから見放されているわけです。どこかしら、買う気にさせない何かがあるのでしょうが、私にはそれが一向にわからないのです。ただ、パジャマの脇のところに少し糸くずが付いていたのですが、それが何の問題があるのか。思えば、私は洋服でも、食べ物でも何でも最後のひとつを買う場面に出くわすことが多いです。そして、そのことでささやかな幸せを感じることができるのです。

mikonacolon