人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

夢をかなえた生活保護

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カムチャッカ半島にある州都の街並み。背景にある山はコリャーク山で2009年にも噴火した活発な火山。NHKまいにちロシア語から。

生活保護は当然の権利、だから夢を諦めない

 今日は永遠に続くかのような鳥のさえずりで目が覚めました。と書くと、なんだかいかにも涼し気な高原にでもいるのかと誤解されてしまいそうですが、違います、いつもの自分の部屋でのことでした。それに実際の高原は夜中まで明々としていてまるで都会のようです。煩いだけの変な音楽に遮られて小鳥の鳴き声など聞こえはしませんでした。2カ所ある窓を全開にして寝ているので、時折風が通り抜けるときがあります。ICレコーダーの目覚ましより早く目覚めたせいか、まだ5時前で薄暗く、気持ちいい至福の時を味わいました。でも、時計が5時を回るとたちまち気温が上がり、猛暑が押し寄せて来たので、寝ていられなくて堪らず起きてしまいました。

 たしか、夕刊にはあの北極圏のグリーンランド最高地点で初めて雨が降ったとの記事が載っていました。米国雪氷センターによると、当地は夏でも気温が低いため普通は雪になるのですが、気温が零度を超える時間が続いたせいで雨になってしまったとか。つまりグリーンランドが急速に温暖化している証拠に他ならないのです。

 外山滋比古さんの「思考の整理学」によると、朝は創造の時間で、一番アイデアが生まれやすい貴重なひとときなのだそうです。1日の中で一番頭がすっきりしている状態なので、自然と何か面白いことが頭に中に浮かんでくる可能性が大なのです。それとは別にして、朝の爽快感を満喫しながら、ふと私の頭に浮かんだのは「バッハで夢をかなえた人」のことでした。その人は高野昭夫さんという男性で現在はドイツのバッハ研究拠点で働いています。以前にも新聞で話題になったので覚えていたのですが、その人のすごいところは好きが高じてバッハを自分の仕事にしてしまったことなのです。

 最初彼は音楽家なのかと思ったら、楽器は弾けなくて、でもとにかくバッハの音楽に取りつかれてしまったようなのです。中学生のとき音楽を聴いて、雷に打たれたようになって、大人になってもその情熱は衰えることなく、自然と身体が動いてしまって気が付くとライプチヒに飛んでいました。だから何でもいいからバッハに関わる仕事をしたいと強く願ったのです。でもバッハ研究を仕事にしたいと思っても学会に入る機会が得られませんでした。一方で、現実は仕事がうまく行かず鬱病になってしまい、生活保護を受ける事態にまでなりました。誰もが描く生活保護のイメージは、「自由がない」とか「落ちるところまで落ちた」とかで、マイナスの視点でしか見られないのです。

 福祉事務所に行ったら、職員に「生活保護は当然の権利ですからね」と励まされました。鬱病の治療のために通っていた病院の先生から「この人には必要です」との許可が出たおかげで、またドイツに行くことができました。現地の教会で受け入れられて、40歳で財団の正職員になれたのです。バッハが好きなおかげで、鬱病を克服し、生活再建まで果たしました。「好きを仕事には妄想でしかない」という世間のステレオタイプ的な考え方は見事に打ち砕かれました。生活保護に助けられた高野さんが声を大にして言いたいのは、「生活保護は恥ずかしい事でも何でもない。当然の権利なんです」ということです。彼の周りのドイツ人にも生活保護を受けている人がいるけど、みんな胸を張って生きているのだと伝えたいのです。生活保護に対する考え方を変えて欲しいし、暗闇の中の希望の光でもあるのだと訴えているのです。

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