人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

失くした手帳の思い出

今週のお題「手帳」

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主婦の友社『イギリス、本物のくつろぎインテリアを訪ねて』から

バッグが盗まれて、その中にお気に入りの手帳が

 今ではすっかり手帳と無縁になってしまった私ですが、若い頃は違いました。当時人気のあった雑誌があって、毎月何らかの付録が付いてきました。たしかその中には手帳もあって、若い女の子が喜びそうな花柄のおしゃれな手帳でした。私もとても気に入って、バッグにに入れていつも持ち歩いていました。その手帳には日々の予定はもちろん、住所録もあって、今でいうならスマホのように情報が満載でした。

 ところが、その手帳を予期せぬ出来事によって失くしてしまいました。はっきり言うと、誰かが私のバッグを盗んだからです。あれは昔、友だちが総菜屋の店をやっていた時でした。やっていたと言っても雇われ店長で、小さな店を一人で切り盛りしていました。材料の買い出しも仕込みもすべて一人でやっていました。毎朝地下鉄に乗って築地に買い出しにも行っていました。そもそもその店をやるきっかけになったのは、保育園のパートをしていた時、あるイラストレーターの女性と知り合ったからでした。

 子供を保育園に預けていた女性が友だちが書いた絵を「いいね!」と褒めてくれたのです。「一緒に仕事をしない?」と誘われて、二つ返事で保育園をやめて彼女の家に行きました。元々保育園の仕事や園長の態度に不満を抱いていた彼女は、やりたかぅた絵の仕事ができると喜びました。故郷の短大を出て、上京してデザイン研究所にも通いましたが、絵の仕事はなかなかありませんでした。それで、スーパーの店員などの絵とは全くない関係のない仕事でもやらざる得ませんでした。その保育園は24時間体制のところで彼女は夜勤もこなし、子供をおふろに入れて寝かしつけるのが大変だとこぼしていました。

 「一緒に仕事しない?」と言われたものの、実際の仕事はアシスタントのようなものでした。最初の仕事はイラストレーターの女性の子供の御守りでした。離婚して2歳の子どもを一人で育てているその人はちょうど再婚したばかりでした。仕事ができて自立しているその女性を彼女はとても尊敬していました。だから絵の仕事ではなく子守りでも不満はなかったようです。しばらくして、今度は女性から「総菜屋をやってみない?」と言われたのです。それで駅前にある商業ビルの地下にある市場の一角で店をやることになりました。総菜屋のメニューは、おから、アジの南蛮漬け、きんぴらごぼう煮しめ等のおふくろの味と言うべきものでした。

 私も時々店に立ち寄ることもありましたが、年末に店を手伝ってくれないかと頼まれました。それは年越しそば用のエビの天ぷらを売りたいからで、表に出て売りたいので人がいるからでした。当日私は地下の店に手伝いに行き、友だちに「バッグはどうしたらいい?どこに置いたらいいの?」と聞きました。そしたら彼女がいつもそうしているらしく、背伸びして棚から籠を取り出しました。「ここに入れておけば誰もとらないよ。大丈夫!」。彼女が自信たっぷりに言うので、私もそれならと信じて疑いませんでした。後から思えば貴重品をあんなところに入れて置くなんて、一番してはいけないことでした。

 天ぷらを売るのに夢中になっていた私はすっかりバッグのことを忘れていました。すべて売れて後片付けが終わり、バッグを取ろうと棚から籠を下ろしました。でも籠の中にはバッグはありませんでした。どこかに落ちているのではないかと狭い店の中を捜すのですが、どこをどう探しても奇跡は起きませんでした。そうなると、考えられるのは誰かが私のバッグを盗んでいったことだけです。盗まれてしまった!という決定的な事実がわかったとき、頭が真っ白になりました。これからどうしようか、お金もアパートの鍵も情報が詰まっている手帳も失くしてしまった!

 途方に暮れている私にイラストレーターの女性はあまりがっかりしないようにと慰めてくれました。私を気遣って失くしただけのお金も渡してくれました。せっかく手伝ってくれたのに悪いことをしたと謝罪の言葉をかけられて、少しホッとしたのを覚えています。

 

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