人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

飛行機に乗り遅れそう

今週のお題「人生最大のピンチ」

自分の名前がアナウンスされて、激しく動揺する

 考えてみると、今では空港という場所はなんだか縁遠い場所になってしまった。以前は空港で喧噪の中に居るのが結構好きだった。カフェのベンチに座って、空港内を移動したり、語り合う人々を人間ウォツチングするのは楽しかった。モスクワに行くときは、ヘルシンキのヴァンター空港の近くのヒルトンホテルに一泊した。その日のうちにモスクワに着ける便があまりにも夜遅かったので、それを考慮したら朝の便に乗ることにしたからだった。ホテルは空港から歩いて10分のところにあったので、夕食は空港内のファストフード店で食べることにした。ハンバーガーを食べながら、目の前を通り過ぎる人々を観察していたら、自然と時を忘れた。ひとまず日本に置いてきた厄介事のすべてが頭から消滅して、なんだかとても清々しい気分になれた。今自分がどこにいるかさえも忘れて、ただただ自由であることを楽しんだ。

 そんなヴァンター空港で思いもかけないピンチに遭遇した。この空港はフィンランド最大の国際空港で世界各国への乗り継ぎ便が多く飛んでいる。もちろん、私も乗り継ぎの時間には最大限の注意を払っていた。時々、空港で「当機はまもなく搭乗を締め切ります。ご利用のお客様はゲイトにお急ぎください」との緊急アナウンスが流れることがある。そんなときは全くの他人事で、もっと早めに行動すればいいのにと勝手に思っていた。まさか自分が当事者になるなんて想像することさえできなかった。そんな人はお目出たい人で、変化が嫌いで出来れば慌てたくない私には理解不能な人でしかなかった。だが、そんな私がなんとその当事者になってしまった。

 あれはどこに行ったのかもう忘れてしまったが、日本に帰ろうとヴァンター空港に戻ってきたときだった。乗り継ぎ時間は十分あるはずで、空港内にあるマリメッコムーミンショップで、お土産を物色していた。すると、そこへ「搭乗口へお急ぎください」というアナウンスが流れた。なんだ、いつものあれかと思って気にもしなかった。ところが、よく聞いてみるとその後に続く○○様はどこかで聞いたことのある、よく知っている名前だった。それはミコナコロンで、私の名前に間違いなかった。その瞬間、私の頭はガ~ンとなり、次に飛行機に乗り遅れる自分の姿が浮かび上がった。

 もしも置いて行かれたらどうしようと私は激しく動揺した。そうならないためにはどうするべきかと考えたら、答えはひとつで搭乗ゲイトまでダッシュすることだった。なんとか間に合う、きっとなんとかなると自分に言い聞かせて、全力で走った。ヘロヘロでヨレヨレになりながら搭乗口のカウンターまでたどり着くと、いつもと変わりない平常心の係員が私を迎えてくれた。よかった、何とか間に合ったと胸をなでおろした。

 機内に乗り込み、予約した座席を探していたら、何か様子がおかしいことに気が付いた。あれ!?嘘のように座席がガラガラで人がポツン、ポツンとしか座っていない。これはいったいどういうこと!?ふと見ると、ある人は3人掛けの座席でごろんと寝転んでリラックスしていた。そう言えば、私は通路側の席を取ったが、隣もその隣も誰も座ってはいない。信じられない光景に呆然としていると、CAさんが「お客様もご自由にお使いくださいね」と声をかけてくれる。ありがたいお言葉だが、私はいつも機内では映画三昧で過ごすことにしている。後にも先にもあんなガラガラの飛行機は初めてだったが、人がすぐ隣にいないのは実に快適だ。

 今から考えても、どうして飛行機に乗り遅れそうになったのか、その理由が分からない。一番あり得るのは時計を現地時間にするのを忘れたからなのだが、その真偽は謎に包まれたままだ。いずれにせよ、飛行機に乗り遅れそうになってパニックになったのと、フィンランド航空のガラガラの座席の場面がいつもセットで蘇ってくる。

mikonacolon