人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

引っ越しで快適な部屋を手に入れる

今週のお題「わたしの部屋」

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予想に反して「わたしの部屋」は快適

 だいたいが大抵の主婦にとって「わたしの部屋」を持つことなどは夢のまた夢だった。子供の部屋は当然とばかりにあるが、家事労働の一切合切を担う妻プラス母親の部屋は無視されてきた。だから、何をするにも台所の隅っこで、こそっと家族の邪魔にならないようにしなければならなかった。でも、そのことは本人からしたら、そんなに屈辱でもないようで、まさか自分の部屋が欲しいだなんてことは考えもしなかった。なぜなら、主婦というのは365日営業していて、休みなどないからだ。常にご主人様(ここでは夫あるいは子供たちのこと)に必要とされているので、自分の部屋などで気楽にくつろいではいられない。いつ呼ばれて、用事を言いつけられるか分からないので、部屋の扉を閉めるわけにもいかないのだ。知らんぷりをしようものなら、後で文句を言われて面倒なことになる。

 だから何か、例えば、読みたくてたまらなかったワクワクするようなミステリーに没頭したいときや、ドラマに感情移入したいときは、家人が寝静まっている頃が最適だった。深夜はさすがに疲れて眠ってしまうので活用できないが、まだ誰も起きてこない早朝の時間は至福の時だった。以前新聞の記事に、社会的に高く評価されている気鋭の詩人のエッセイが載っていた。思索の場がなんと深夜のキッチンの片隅だと書いてあったので仰天した。暗闇の中だからこそ制作意欲は湧くのだと綴られていたのでまたビックリ。摩訶不思議な詩人の頭や心模様など知る由もないが、平々凡々とした一般人の主婦にとっては、個室は考えたこともない代物だった。少なくとも私の友人にとっては・・・。

 友人は長年住んでいたアパートから新しい団地に引越すことになった。それまでは6畳の和室が彼女の部屋だった。息子が7年前に結婚して家を出て行き、部屋が空いたおかげで個室が持てたのだ。だが、当時は長年”隅っこ”に慣れていたので、広い部屋が落ち着かなかった。部屋を譲り受けたと言っても、未だに息子が使っていた本棚や机が部屋の大半を占めていた。どう考えても、自分が今いる部屋は息子の部屋で、なんだか居心地が悪かった。人の部屋にいる感覚ほど不快なものはなくて、自分の部屋なのにまるで借りて来た猫、つまりお客様だった。自分の部屋から、息子を追い出すのに1年以上もの時間がかかった。それはかつては最愛の息子だったが、今は他所の人になってしまった息子を受け入れることだった。

 すっかり自分の部屋として馴染んで来た部屋から引っ越したのだが、その際ひとつ問題があった。それは今の部屋は6畳の和室なのに、新しい部屋は3.5畳だったことだ。さて、部屋の広さが今の半分になってしまう、どうしたらいいのだろう、それに荷物をどこに無理やり押し込んだらいいのだろうか。あれやこれや想像するだけで、頭が混乱してパニックになった。だがそうしている間にも引っ越しの期限が迫ってきた。とりあえず荷造りをしなければと、今使っている物、どうしても生活に必要な物を除いたすべての物を段ボール箱に詰めに詰めた。それでも足りないので、押し入れに溜め込んであった量販店で貰った大き目のレジ袋や手提げ袋に詰め込んでいった。

 本当なら、段ボールに詰め込む際に、荷造りの準備の段階で、それぞれの物の要不要を判断しなければならないのだが、それをやっている時間はない。仮にあったとしても天文学的な時間を要するので、やめておいた方が無難だ。過去に不用品を大量に捨てたことがあったが、それは何かとても腹の立つことがあって、その怒りを利用したまでだった。今回はそんなうまい具合にはいかず、なんでもいいから物を運び出すことになった。その結果、愛着があるわけでもなく、思い出すこともなかった不用品がごっそり新居に運び込まれた。なんともしようがないから、そのうちゆっくり整理整頓するかと諦め半分でいたら、後からその必要がないとわかって喜んだ。

 友人の部屋は確かに3.5畳のフローリングなのだが、作り付けのクローゼットがあるので、洋服が結構な枚数掛けられて、その下には敷布団を入れられるスペースもある。掛布団と毛布は上の棚に押し込めばすっきりと片づく。そして何よりも助かったのは、玄関の下駄箱の上と脇に収納する場所がたっぷりとあることだ。おかげで大半の段ボール箱は開けることなく、そのまま押し込んだ状態で現在に至っている。日々暮らしていると、今は不要だけれど、捨てられないものがだんだん増えていく。そういったいつか役に立つと思われるものを放り込んでおくための場所ができたことで、友人の部屋は快適な空間になった。なぜなら、今必要な物しか目の前にない部屋に住むことができたからだ。

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