人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

夕刊は無くてもいい?

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イグアスの滝で一番のみどころは、最も奥にある落差80mの「悪魔の喉笛」。NHKまいにちスペイン語6月号から。

夕刊を取らない理由は役に立たないから?

 お盆に田舎に行って、ひとりで暮らしている義姉と過ごしました。以前から気になっていたのですが、新聞が朝刊しかありません。「こっちは夕刊は来ないの?」と尋ねてみると、「こっちの人はみんな夕刊は取っていない」のだと言うので驚きました。「なぜ取らないの?夕刊なんて何百円で安いのに・・・」と畳みかけると、素直な人なので「じゃあ、新聞屋さんに電話して聞いてみよう」ということになりました。普通なら思っただけでそこで話は終わるのですが、本当にそれを実行してしまったのです。しかも私が言った何百円というのはかなり前の値段だったらしく、実際は「千円もするじゃない!」と不満なようなのです。それに「夕刊はこんなに薄いじゃない?」とペラペラの新聞を私の目の前で「ほら、見てごらん!」と差し出しました。「じゃあ、断わればよかったのに。どうして断らなかったの?」と理由を聞いてみると、「値段だけ聞いて電話を切るわけにもいかない」とまんざらでもないようなのです。

 後日友達に夕刊を取ることにしたと話したら、「あんなの読むところがほとんどないじゃない。役にたたないどうでもいいことが載っているでしょう」と一刀両断されてしまいました。それでも義姉はひるむことなく、「その役にも立たないことがいいんじゃない」と主張したそうです。まあ、そんなことは友達には到底理解してもらえないことは承知の上で自分が楽しければいいと考えているのです。ある物事が自分の役に立つかどうか、あるいは自分の生活に関わってくるかどうかで、人間は興味を持つべきかどうかを判断するものらしいのです。その点からいえば、夕刊に載っているような演劇や映画やコンサート、あるいは将棋、囲碁といった、今の言葉でいえば不要不急、どうでもいいことは読む必要はないのです。なぜならたいして関心もなく、身近には感じられない遠い別世界のことだからです。

 夕刊に載っている話題は確かにこの世界に存在していることなのですが、自分とは接点がないし、知らなくてもいい世界の話なのでした。自分の生活に深刻な影響を及ぼす話題しか知りたくもないという考え方は、他者の身になって物事を考えるということを阻む原因になりえます。つまり、他人の不幸を自分事として考えられなくなってしまうのです。彼らに起こっていることと自分とは何の関係もないのだと、自分の心の中ではっきりと線引きをしてしまってお終いにします。もちろん多少の後ろめたさは残るのですが、そのことは敢えて考えないようにして忙しさに紛れて日々を送ればいいのです。

 私の田舎は「夕刊はなくていい」人が一般的なようですが、今住んでいる地域では皆あまり新聞を取っていません。新聞を取らない理由は値段が高くて、テレビやネットのニュースで間に合ってしまうから必要ないというものです。ただ、テレビやネットでは手に入らない貴重な事実を新聞を読んで初めて知ってしまうこともあるのです。ある日の朝日新聞の女子高校生の投書には腰を抜かすほどの衝撃を受けました。高校生というものの実態を本当の意味で分かっていませんでした。彼女は16歳でコロナのワクチンの2回目の接種を終えたところでした。お約束のように2~3日は高熱が出ましたが、若者が副反応を恐れてワクチン接種を拒むのを何とかできないものかと考えていたのです。それで友だちに自分の考えを話して意見を聞こうかと思ったら、予想に反して仰天してしまいました。なぜなら「皆、政府に騙されるんじゃない!」と相手にされなかったからです。それと当然皆が情報を共有しているとの認識が思い込みでしかなかったとわかったからです。

 その友だちは普段から新聞はおろか、テレビも見ない人で世の中の移り変わりとは関係なく生きていたからです。興味がないと言われたら、「はい、それまでよ」で話をしようにも始まらなくて、言うべき言葉が見つかりませんでした。高校生が皆彼女のような人ばかりだというわけではありませんが、考えてみると、私も高校生の時は自分の世界だけに生きていました。新聞も開いたことはなかったし、テレビもほとんど見ませんでした。FMラジオを聞いていましたが、自分の好きなパーソナリティの番組を聞くのみでニュースには興味がありませんでした。たぶん、政治とか世の中は誰かが動かしてくれるものであって、自分ごときのようなちっぽけな存在はその渦の中に巻き込まれるしかないと考えていたのでしょう。その点では今の高校生は当時の私のような生き方をしていてはダメですね。否応なく巻き込まれてしまうからで、自分の生活に直接関わってきます。

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