人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

今本当に行きたい国は

今週のお題「行きたい国・行った国」

行きたいと思っていれば、チャンスは向こうから

 どうやら私はすぐその気になる性格で、感動するとその場所に行きたくなる。テレビの旅番組やドラマに出てくる見知らぬ土地、あるいは登場人物のちょっとした発言にも反応してしまうのだ。例えば、以前韓国ドラマの『星から来たあなた』でキム・スヒョン扮する宇宙人が「地球で最も好きな場所」にあげていたのはチリのアタカマ砂漠だった。その名前を聞いたこともなく、それがどこにあるのかもわからないが、たいそう素晴らしい所に違いないと思った私はすぐさま地図帳を開いた。アタカマ砂漠の場所をチェックしたら、どんどん行きたい気持ちが高まってきた。だが、どう考えてみても、現実には南米まで行くのに何十時間もかかる。ただそれだけのために、そこに行くと言うたいそうな情熱は残念ながら持ち合わせてはいない。ふっと湧いたような、単なる思い付きなのだから泡のようにすぐに消えて、何の痛みも残らない。

 死ぬまでに行きたい絶景の場所としてよくテレビ番組や雑誌などで特集されることが多いウユニ湖にもできれば行ってみたい。私の「行ってみたい」はあくまでもチャンスがあれば、つまりその機会が向こうからやってくるような感じで訪れたならという意味での話だ。おそらく自分から進んで積極的にアプローチするようなことはしないだろう。それは自分でもはっきりわかっている。南米にあるパタゴニアも魅力的な場所だ。以前NHKのラジオテキストのまいにちスペイン語に載っていた、口絵の写真にしばし見とれてしまった。だが、南米はやはり遠すぎて、もっと自分の気持ちが高まらないと実際に行動を起こすところまではいたらない。

 エジプトにしたって、ガイドブックまで買ったのに、旅の第一歩を踏み出したかのように見えたのに今一つ踏み切れなくて、未だに行ってはいない。かと言ってそれで後悔しているかと言うと、そんな気持ちは微塵もないのだから不思議だ。でも以前政府の招きで東日本大震災で被災した高校生が訪れている記事を新聞で見たことがあった。博物館を見学している写真が載っていて、それを見ていたらまた行きたい気持ちが芽ばえてしまった。何のことはない、またいつもの”あれ”で癖のようなものだ。そんな気持ちは”期間限定”でその場限りのもので、すぐに忘れてしまう程度の頼りない盛り上がりに過ぎない。

 それでも私には面と向かって、大きな声では言えない夢もあるにはあった。それはアフリカに行くことで、ヨーロッパ各国ならいざ知らず、そこはあまりにも遠かった。最初からアフリカに行くと言う壮大な計画を立てる気にもならず、夢で終わるはずだった。実際に遊び半分でテレビ番組で紹介されていたモロッコのガイドブックを買ってみたことがあった。行く気もないのに、単なる興味があるというだけで本を買って、それを読んで楽しんでいた。その時は暫しモロッコに行った気分を味わい、妄想に浸ってそれでおしまい。

 ところが、予期せぬことに突然モロッコに行く機会は訪れた。スペイン旅行で、スペイン最南端の町アルバシラスでクジラウオッチングをしようとしたときに、出発直前で催行が中止になっていることを知った。出発まであと2週間しかないのにどうしたらいいのか、と考えて、ふと地図を見たら、アルバシラスの目の前にはアフリカ大陸が広がっていた。要するに、”目の前の木を見て森を見ることができない”私はスペインがヨーロッパでアフリカに最も近い国である事実に気づかなかった。その時の私は目から鱗だった。フェリーに2,3時間も乗れば、あのアフリカに行けるのだと思ったら、心が震えた。もうアフリカに行く機会はこれを逃したら、永遠に訪れないのではないか、心底そう思った。たった4日間しかないが全力で楽しもうと、きつすぎる計画を実行した。その結果、モロッコのタンジェールで食べたスバゲティが当たったのか、それとも疲れがたたったのか、後半は激しい下痢と嘔吐に苦しんだ。それでも何とかスペインに戻ることができて、本当に幸運だった。私はなんてついているのだろう。

 正直言って、旅先で下痢になったのは後にも先にもあれが初めての経験だった。あの時の教訓で、旅のお供には下痢止めが必須だとわかったが、懲り懲りしているかと言うとそうでもない。モロッコはまさに別世界で、古代と現代が融合しているような場所だ。スペインに行ったら、また寄ってみたいと本気で思っている。

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