人生は旅

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カナダで保育士という選択

給料はなんと手取りで33万円!?

 先日の朝日新聞に載っていた『わたしが日本を出た理由 4⃣ 』を読んで目から鱗だった。なぜなら九州出身の27歳のその女性はカナダで保育士として働く道を選んだと書いてあったからだ。某有名私大を卒業し、カナダの公立大学に進んで保育士の資格を取って現在はデイケアセンターで働いている。保育士は子供の頃からの夢の職業だったが、最初から日本で保育士になるつもりはなかった。日本の保育士は残業が多く、給料も少ないとか、ネガティブな情報しか聞こえてこなかったからだ。

 でも、ちょっと待って、だからと言って、なぜ、外国、それもカナダなのか。普通は保育士の夢をさっさと諦めて、周りの友だちと同様に一流企業に就職するのではと、私などは思う。記事では触れていないが、いったいどうやって、どこからカナダの保育士事情を調べたのか。日本でダメなら、外国でもいいか、という信じられないような考え方ができることに驚きを超えて感心する。なんと自由で、柔軟な考え方なのだろう。でも未知の国で暮らすことへの不安も半場ないだろうに、若くして自ら人生の重要な決断をしたその勇気に脱帽せざるを得ない。彼女くらい勇気と熱意があれば、私の人生も少しはましなものになっていたかもしれないと、勝手なことを思いたくなる。

 現在彼女が勤務しているデイケア(保育園のこと)は午前8時半から午後5時の勤務で、基本的に残業や持ち帰り仕事はない。特筆すべきは日本の保育園に付き物の運動会やお遊戯会と言った行事がほとんどないことだ。それに教室を可愛く飾り付ける、面倒なと言うか、見た目には微笑ましい作業もしなくていい。なんだかそれじゃあちっとも保育園らしくないではないかと歎きたくもなるが、あれは保育士にとって、楽しくもあるが、また手のかかる作業なのだ。

 ふと去年亡くなった叔母がいつも言っていたことを思い出した。叔母の夢は保育士で、勝ち気で努力家の叔母は頑張って保育士になった。「あれはやりがいのある仕事だから一生続けていきたい」と願っていたが、残念ながら当時は時代がそれを許さなかった。結婚して仕事を続けると言う選択肢は世間一般では認められず、叔母は見合いをして工場を経営している人の妻になった。当時保育園の行事のとき撮った写真を嬉しそうに見せてくれたのが今でも記憶に残っている。叔母にとっては保育園の行事での園児への指導も生きがいだったのだと思えてきた。

 閑話休題。話を元に戻すと、このカナダで働く彼女の給料は手取りでなんと33万円というから目を丸くしてしまう。こんな高給なら、物価高のカナダでも十分ひとりで暮らしていける。カナダ移住という選択肢は間違っていなかったと胸を張る。それに保育士という職業は永住権に繋がりやすいらしく、幸運なことに昨年末に移民局から「承認」の連絡をもらった。20代前半で人生の重要な決断をし、カナダで生きていくと覚悟を決めたのは、ある意味すごいことだ。

 それにしても保育士という職業の仕事内容や待遇の違いに困惑するばかりだ。新聞の記事を読んでみても、俄かには信じがたい話だがカナダでは実際そうなのかもしれない。これを読んだら、保育士志望の人はどう思うだろうか、いやそれよりも現役の保育士の人はどう感じるだろうか。果たしてこれから保育士を目指す人は自分も彼女の後姿を追おうとするのだろうか。正直いって十分あり得る。日本のどうにもならない現実に絶望し、見切りをつけた若者が外に目を向けて海外を目指そうとする。普通は今の状態に安住するのが堅実な生き方だが、それでは辛すぎる。だから若者にはもっと冒険して欲しい。それはもうちょっと勇気を出して一歩進めば、人生変わっていたかもと思ってしまう中年のおばさんの戯言に過ぎないのだが。

 保育士と言えば、最近は幼稚園バスに置き去りとか、優しそうな保育士が幼児を虐待とか前代未聞の不祥事が続いている。暗いニュースばかり耳にする昨今だからこそ、余計にこのカナダの保育士の記事が気になった。

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