人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

バスでパリの街を満喫

不安な地下鉄よりもバスが好き

 まだはっきりした旅行計画すら頭の中に描けていないのに、パリのガイドブックを買ってしまった。どうせ必要になるからとの軽い気持ちだったが、なんだかそわそわしてしてきて気になる。何気なくガイドブックを手に取ってペラペラめくると、いつの間にか熱中し、現地に行ったつもりで頭の中で自分の行動をシュミレーションしてしまう。以前とは違って空港からのロワシーバスはモンパルナスまで行かない。オペラガルニエまでしか行かないから、そこからホテルまではバスに乗るか、あるいはタクシーを利用するかのいずれかの選択肢しかない。

 数年前オペラガルニエのほど近くにホテルを予約し、自力で行こうとしたが道がわからず迷子になって、大勢の人で賑わうプランタン通りで泣きそうになった。交差点で信号待ちをしている、楽しそうな日本人観光客のおしゃべりを聞いていたら、ついつい話し掛けそうになってしまった。もうひとりの冷静になった自分が、「この人たちに助けを求めても埒が明かないでしょう」と囁くので、今自分が頼るべき相手は彼らではないと気付いた。そしたら交差点の向こうに”TAXI”の文字が見えた。知らなかった、パリの街では大きな交差点には必ずタクシー乗り場があることを。一番確実にホテルにたどり着く方法は、TAXIに乗るしかしかなかった。運転手さんに嫌な顔をされても、「こんなに近くなのだから、歩いて行けるでしょう」と呆れられても、平気の平左を決め込んで押し通して乗せてもらった。こちらにとっては絶体絶命の危機なのだから、申し訳ないが許してもらうしかない。

 考えてみると、昔は外国でひとりでTAXIに乗るだなんてことは怖くてできなかった。でもある時、確か夜遅くバルセロナの空港から市内に行こうとしたら、TAXIに乗るしか選択肢がなかった。なので、私としては清水の舞台から飛び降りる?つもりで仕方なく利用した。そうしたら、予想外に快適で、特に怖い思いもしなかったので、まあ当たり前のことなのだが、それ以来TAXIに乗るのは平気になった。特に日本のように駅の近くや街中に交番という便利なものがない外国においては、TAXIは唯一の頼れる味方なので、大いに利用したい。だが、私がこれから行こうとしているパリでは街中ではなかなかタクシーは拾えなかった。だから、TAXIを捕まえるのには大通りのタクシー乗り場が一番確実なスポットと言える。

 最近毎日のように以前よく利用していた宿泊予約サイトのbooking.comからメールが届く。「そろそろ予約しませんか。あなたはレベル3の会員なので、20%から30%の割引が効いてお得に泊まれます」との誘い文句に心は揺れる。言われなくてもそのつもりだが、パリでの宿泊先をどの地区にするかはまだ思案中で、具体的なことは頭の中にも浮かんでこない。ただ、はっきりしているのは、ロワシーバスに乗って、終点のオペラガルニエで降りる、それからタクシーでホテルに向かうだろうことだ。

 それともう一つの選択肢はバスを利用することだが、これには少し問題がある。果たしてそんなにうまくバスの停留所を見つけられるだろうかということだ。もちろん、旅行準備の段階でネットでバス路線図を調べて把握しておけばいいのだが、現地では戸惑うことばかりでそううまくはいかない。実を言うと、私はパリの街をバスで巡るのが大好きだ。スペインへ行く列車が発着するモンパルナス駅に行くときもバスを利用し、用もないのにサンジェルマン界隈をバスの中から見学して楽しんでいる。興味津々だが、歩き回るのは迷子になりそうで不安なので、バスの中からパリの街を眺めて大いに楽しんでいる。

 ガイドブックには「初心者にはバスはハードルが高い」と書いてあったが、そんな警告も好奇心の前には何の役にも立たない。そもそもなぜバスを利用するかと言うと、何のことはない、地下鉄が怖くて乗れないからだ。昔初めてパリに行こうとしたとき、危険情報のガイドブックを読みすぎて、どうしてもパリの地下鉄には乗れなくなった。もちろん地下鉄が便利なのはわかってはいるが、あの見るからにどん底に突き落とされるような、細くて暗い階段を降りていく気にはならない。それに別に地下鉄に乗れなくても困ることは何もないからだ。おかげで、少しだけバスに詳しくなって、バスでどこにでも行けるのだとわかったし、バスの窓から街の様子を眺めて、人々の暮らしを観察するのが楽しい。おそらく、ロンドンに行く列車が発着しているパリ北駅にもバスを利用して行くだろう。

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