人生は旅

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パリに住んでみたい

今週のお題「住みたい場所」

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ルーブル美術館のガラスのピラミッドの内部。

抗えない魅力を放つ街パリを堪能してみたい

 正直言って、今まで住みたい場所なんて考えたこともありませんでした。でも考える必要なんてありません。即答できます、それはパリだから。住みたい街があのパリ、現実的に考えると「本気なの?暮らすには大変みたいだけど」なんて友達に言われてしまいそうです。どう見ても物価高で住宅事情もよくないので、「あそこは旅行に行くところでしょう」と怪訝な顔をされてしまいます。でも、旅行では足りないのです、お金も時間も足りません。いつだって好奇心は消化不良を起こし、旅行が終われば思い出に浸ることなく、忘れることで不平不満を誤魔化していたのです。

 どう頑張っても私の経済状況ではパリに1週間程度滞在するのが限界です。ルーブルやオルセー、オランジュリーなどの主要美術館を巡り、最後にヴェルサイユ宮殿にでも行けばあっという間に過ぎてしまいます。旅行の計画の段階では、稲葉由紀子さんの『パリのお惣菜』を見て、目当てのところを捜すのですが、実際にはそんな時間はありませんでした。それにそんなにきっちりとした日程を組むわけでもないので、道草をすることが多いからです。自分の好奇心の赴くままに行動するので、行った先に面白いものがあれば、そちらに惹きつけられてしまうのです。

 パリという街は不思議です。パンの食事は2日もすれば飽きてしまって、食べる物がなくて、スーパーの中を彷徨ってしまいます。そんなときは早くパリを脱出して、スペインのサン・セバスティアンに逃げしたくなります。安くて美味しい物を食べて早くホッとしたいからです。それなのに、空腹を満たしたら、またパリに行きたくなってしまうのです。花より団子なのですが、どうしても花への思いを忘れることはできません。パリは町全体が美術館、そんな文句をガイドブックで見た覚えがあります。その美術館見学に欠かせない乗り物はバスです。パリのモンパルナスからルーブル美術館に行く路線や、オペラ座からサンジェルマン・デプレを通る路線の車窓は楽しめます。特にセーヌ河畔からサンジェルマン界隈に抜ける通りは小さな店が並び、かの地に住む人達の生活が垣間見られて好奇心を刺激します。日本のバスでは絶対行かないような狭い道も通ってくれるおかげで、まるで観光バスのように錯覚してしまうのです。

 そのバスの中での人間ウオッチングがまた興味深いのです。大型のベビーカーでたくましい黒人の女性が二人も乗り込んで来たと思っていたら、ひとりの女性が何やらバッグをごそごそやって探し物をし始めました。捜している物は何か大事な物らしくとても焦っているようです。ふとベビーカーの女性の足元を見ると何か小さなカードのようなものが落ちていました。それなのに気づこうともしないので、私はだんだんイライラしてきて、気になって仕方ありませんでした。声をかけるべきかどうか躊躇していたら、すぐに彼女たちは下車しました。それで、私は探し物が見つからず青くなっていた女性にそのカードを手渡すことができました。そのカードを見た瞬間、彼女の顔がパアッと明るくなりました。

 住みたい場所がもしもマスコミで言われているように「物価が安くて暮らしやすい街」だとしたら、ベルリンはそれに当てはまります。事実、ドイツの都市の中で一番物価が安くて暮らしやすい街で、自分で仕事を始めるには最適な街です。失業率は高くて仕事がないのですが、それなら自分で作ればいいとカフェなどの店を始める人が大勢やってくるのです。私がベルリンを旅行先に選んだのも物価が安くて楽しめそうと単純に思ったからでした。私の目的はあくまで食べることで、目当てのレストランやカフェに行くことしか考えていませんでした。だから、ついでのつもりでペルガモン美術館に行きました。ここには警備員がいるだけで、今までに行った美術館と違って椅子に座っている係員の人がいませんでした。ある日、私は見学に疲れて、階段の踊り場にある椅子で休んでいました。そしたら、ひとりの警備員の男性がこちらの方にやってきました。彼はさもつまらないというような顔をして、ふらふらと歩き回りました。そして欠伸までしました。その時偶然にも目があってしまったのですが、その時の彼は苦笑いを浮かべていました。始めて見ました、警備員さんのあんな退屈そうな顔を。

 何が言いたいかというと、私は何回か通った後にベルリンには行かなくなってしまいました。つまり、あの警備員さんと同様に退屈してしまったのでした。要するにベルリンには私の好奇心をくすぐるような何かが欠けていたのです。その点において、団子より花が重要なのでした。はっきり言って、パリで美食を、美味しい物を食べるという考えは微塵もありません。食べる物は最低限度でいいのです。パリにしかない美しいもの、今まで見たこともないものを目と心で精一杯感じたいだけなのです。美しいものは私に幸せにしてくれて、生きる希望を与えてくれます。「また出会えるのなら、もう少しだけ頑張ってみようか」と生きる気力というか、勇気さえ与えてくれます。だから、できることならパリに住んでみたいのです。

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