ネットなしで過ごす、それもまたいい
既述したように、私は目下帰省の準備中だが、いつもと違ってあることを忘れている。それは田舎でもネットを使えるようにとポケットWi-Fi を借りること。もうとっくに申し込んでいる時期なのに、なぜか今回はその気にならない。つまり、もはやWi-Fiを借りる必要性を感じなくなっているのだ。少しの間、ネットから距離を置くのもいいかなあと思っている。その理由は動画サービスで見たい作品がないからで、あっても過去に見た作品が多くて二度も観る気にならないからだ。
今現在視聴している作品は海外ドラマ、それも中国ドラマの『趙氏孤児』と『驪妃』だけで、その他には探す気もない。以前は気分転換になるからと、特に面白くなくても我慢して見続けていたが、最近はこれって時間の無駄なのではと思い始めた。何も時間の有効利用どうのこうのの問題ではなくて、面白くも、楽しくもないのにそれでも見続けている自分に嫌気がさした。今さら言うまでもなく、一日は２４時間しかないし、時間は無限にあるわけではない。だから限りある時間の一瞬、一瞬を楽しみたいのに自分がしていることはそれとは真逆の行為だった。
唯一利用している動画サービスはGAOで、登録したら自動的にプレミアム会員になった。すると、翌月から５０８円がカードから引き落とされるようになった。一応GAOは無料動画ということになってはいるが、月にそれぐらいならまあしようがないかと思った。サブスクだからと欲を出して元を取ろうとすると自分を見失うことになるから危険だ。それはU-NEXTやHulu、ネットフリックスで体験済みだ。一度、スマホでGAOを登録してみたら、えらい目にあった。その日から四六時中、宣伝のショートメールが届いて煩くて堪らない。すぐさま登録を抹消したら、いつもの平安を取り戻してホッとした。
今までなら何かドラマや映画が見たいなあという時はレンタルビデオ店に行けばよかった。だが、昨今はビデオ店は絶滅したので動画サービスしか頼るものがない。だからと言って毎月たいして利用しないのに高い料金を払うのは心外だ。それで、今まで動画サービスに費やしていた時間を他の何か、例えば、新聞を丁寧に読んだり、あるいは積読状態だった本を気にかけたりするようになった。それが案外新鮮で楽しいことに気づいた。水滴の妖精であるドリッピーの”今のこの瞬間を楽しめ！”の言葉を思い出す。
帰省中はマルプー（マルチーズとプードルのミックス）１匹と野良出身のネコ２匹と戯れる貴重な時間だ。正直言って、別世界なのでネットなんていらないのだ。生まれつきなのかフレンドリーな性格の犬はやたらとすり寄って来る。ネコと違って箱入り娘の犬はグルメなので、お土産にも気を遣う。特売のジャーキーをあげようとすると、匂いを嗅いだだけで、フン！とばかりに横を向いた。そうか、気に入らないのかと諦めて、今度はマグロのゼリー状のステックを差し出すと、喜んで吸い付いた。さすがにグルメ犬だと感心し、それではこちらもと義姉のミチコさんとお寿司を食べていたら、誰かが、私の肩をトントンする。誰かとおもったら、マルプーで「わたしにも頂戴！」とのサインだった。無視しようものならいつまでもやるので、仕方なくちょっとだけ与える。すると満足したのかもう寄っては来なくなった。
ネコ２匹に至っては犬と比べると飼い主が帰ってきた時の態度が極めて悪い。マルプーは天にも昇るかと思われるくらいの喜びようでミチコさんを迎えてくれる。だがネコ２匹は玄関に来やしない。いるかどうかを確かめるために部屋の中を見ると、それぞれ明後日の方を見て、シランぷりを決め込んでいた。伸びをしたかと思ったらチラッとこちらを見て、「なんだ、帰ってきたんだ」というような顔をする。ミチコさんは寂しそうだが、まあネコだからしかたないかと気にする様子もない。
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