人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

弟へ270枚の葉書送る

今週のお題「最近あったちょっといいこと」

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弟を励ますために、毎日葉書を書いて投函する

 昨日あたりから、本格的な冬の到来を感じさせるほど寒くなってきました。こんな時はどうしても暖かい食べ物と人の温もりが恋しくなります。先日新聞を読んでいたら、思わず心が温かくなるような記事に出会いました。それは姉が遠くに住む弟に毎日のように葉書を書いて励ますというものでした。北海道の千歳に住む姉がはるか遠くに住む弟を思って、祈るような気持ちでペンを走らせるのです。どうして葉書を送るようになったのか、それは毎年必ず新年には年賀状をくれた弟なのに、昨年はなぜか届かなかったからでした。すぐに電話をしてみると、声に元気がありません。理由を聞きだすと、「けがで仕事を休み、その後復職したのですがコロナの影響で会社が休業。収入が減り、気持ちも落ち込み、生活も精神的にも不安定な日々」で落ち込んでいたのです。だから年賀状を書くというような心の余裕がなかったのでしょう。経済的にも精神的にも追い詰められていたら、自分の事だけで精一杯で、とても周りにいる誰かのことなど思いやる気持ちにはなれません。そんな状況では自分以外の人間のことはどうでもよくなりますから。

 姉は弟から今の窮状を聞いて、自分に何ができるだろうかと一生懸命考えました。本当ならすぐにでも弟の側に駆けつけて励ましたやりたい、でも姉弟を隔てる距離がありすぎて、それこそドラえもんのどこでもドアがあったらなあと夢みたいなことを本気で思ってしまいます。この記事によると、「はがきは昔、『羽書』とも書いた」そうで、文字通り羽根があって、相手のところに飛んでいくイメージなのです。インターネットによるメールが光回線で瞬時に届くのと比べると、なんだか自然の風に乗ってふわっとした感じが送り手の優しさまでも運んでくれる気がします。毎日姉は弟を想って、葉書を書いて投函しました。でも一体何を書いて送ればいいのだろう、などと無粋な私などは困り果ててしまいます。精神的によれよれになっている相手にどんな言葉をかけていいのやら、まさか「頑張れ!」なんて月並みなことは書けるわけもありません。

 姉が一番弟に伝えたかったことは「あなたは決して独りじゃない」ということでした。弟は今ひとりで悶々としているけれど、ちゃんと家族がいて自分の事をものすごく心配しているのだと伝えたかったのです。「私はあなたの味方だからね、きっとすべてうまく行くから」と明るい気持ちで希望を持って生きて欲しいとの願いを葉書に託しました。人が呆れかえるほど楽天的な性格でもない限り、収入が減って先が見えなくなったら誰だって落ち込みます。でも落ち込んでばかりもいられないので、とにかく希望の芽を見つけられるように、自分なりになにか行動を起こすしかないのです。

 ところで、姉が弟にいったいどんな葉書を送っていたか、とても興味津々なのですが、ちょうど記事には葉書の束の写真が載っていました。小さな写真なのですが、よく見てみると、可愛い猫の写真が付いている葉書に一言二言書いてありました。読めないので私なりに勝手に想像してみると、例えば、「ちゃんと食べてる?」とか「明けない夜はないんだよ」とか「今は楽しいことだけ考えて」とか、そんなたわいもない文句なのだと思います。考えてみると、落ち込んでいる人を励ますのに長々としたお説教はいらないのです。その点において相手が葉書を見たときに目に飛び込んでくる情報、つまり絵や写真はものすごくインパクトを与えます。目にした瞬間に笑う気分ではない人が、思わずクスッとなってしまうような何かが欲しいのです。

 姉が弟に出した葉書にはネコの可愛いイラストがたくさんあるので、弟はもしかして猫好きなのでしょうか。写真から覗えるのは、思わず笑みがこぼれるような葉書を心がけていることです。明るくて綺麗な色の葉書を、弟の暗い心が少しでも明るくなりますようにと祈りを込めて投函していたのです。もちろん姉は葉書を送るだけでなく、好物の手料理を持って弟の元に足げく通いました。そのおかげで、現在では弟も以前の明るさを取り戻しました。なんだかドラマのような話ですが、これが現実なのだとしたら、もう姉の奮闘に脱帽するしかありません。

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