人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

祝日に出勤で予想外の出会いが

今週のお題「祝日なのに……」

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祝日なのになぜか会社に憧れの人がいて

 祝日なのに出勤して、ほとんど諦め半分で仕事をしていたのに、思わぬ幸運に巡り合った経験があります。あれは上司と同僚の3人で午前中仕事をして、昼休みになったので上司がお昼をご馳走してくれると言ってくれました。でも私は出勤途中にパン屋によってパンを買って来たのでその申し出を断ったのです。あの頃会社には休憩室にテラスがあって、その場所から街を眺めるのが好きでした。少し歩けば緑あふれる公園だってあるのですが、そんなことをしていたらあっという間に貴重な昼休みが終わってしまうのです。いつもなら仲のいい同僚とおしゃべりをして楽しい時間を過ごすはずなのですが、たまには一人でぼんやりするのも悪くないなあと思いました。テラスのベンチから見下ろす街は人影もまばらでひっそりしている。いつもの賑わいが噓のように静まりかえっていて、自分の知らない一面を発見した気がして新鮮だったのです。

 一人でベンチに座ってパンを食べながら、ぼんやりしていたら、誰かの声が聞こえたのです。「あれ~?祝日なのにどうしたの?」その声の持ち主は国際部のやり手の営業マンの矢田さんでした。背が高くカッコよくて、物腰も穏やかで女子社員の憧れの人でした。彼は相手に気を使わせない人なので、自分から誰にでも話しかけてくれます。だから、気まずい雰囲気になることはないので、一緒に居るととても楽しい人でした。そして、その態度は女性に対しても変わることはなく、躊躇せずに食事に誘うのです。いわゆる、プレイボーイと言ってもいいかもしれません。私の同期の磯貝さんは新入社員の時にすぐに矢田さんにドライブに誘われました。トヨタカローラで通勤していた彼は会社の帰りに3人で食事に行こうと私に言ってくれたことがありました。もちろん、私は気を使って断りました。

 磯貝さんは同期の中で断トツの美人で、そのことは誰もが思っていたのです。でも女性と言うのは嫉妬深くて残酷です。新人の泊りがけの研修の時に聞いてしまったのです、同期の何人かが磯貝さんの悪口を言っているのを。あの時私がトイレに入っていたら、何やら話し声が聞こえて、「ねえ、見た?磯貝さんのすっぴんの顔!朝の洗顔の時見ちゃたわよ、あの人まるで別人よねえ」。この発言にはさすがに衝撃を受けてしまいましたが、その真偽は私にはどうでもいいことでした。なぜなら、彼女は私の知る限りとても優しくて親切な人でしたから。それに短大の学費は全部自分で稼いだと言うほど頑張り屋だったからです。

 突然現れた矢田さんに驚いていた私に、彼は「僕は休みの日でも会社で仕事をすることがある」のだと説明してくれました。それから昼休みが終わるまで私たちは話をして盛り上がったのです。あの時何を話したのか、内容はもうよく覚えていないのですが、私が買って来たパン屋の袋を見つけた矢田さんが実は自分もこのパン屋のドーナツが気に入っているとか、そんなどうでもいい話題からいつの間にか楽しい時間が始まったらいのです。コミュニケーション能力抜群の彼だったからこそ、気まずい沈黙を免れたのだと今だからこそ思えるのです。普通の人なら、「休みの日は何をしてるの?」などという下世話な質問をしてしまいそうです。これじゃあまるで身辺調査みたいで、答えるる方は軽く受け流したくなるのも無理はありません。あまりにもストレート過ぎるため、短くて適当な言葉を返されてしまったら、到底話の糸口は見つかるわけもありません。その結果、何を話していいのやらしどろもどろになり、何かの理由をつけて早々と退散するしかないのです。

 祝日なのに出勤と聞くと、そりゃついてないとか、仕方がないねなどと友達や家族から慰めの言葉をかけられしまいます。でも不幸中の幸いとも言える経験をすることだってあるのです。今まですっかり忘れていたのですが、記憶の底から引っ張り出してきました。それが私にとっては憧れの人とのひとときの思い出なのです。

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