人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

パンプキン詐欺って何?

見当もつかない発想、言葉遊びがおもしろい

 毎週日曜日の朝日新聞に掲載されている『朝日歌壇』を楽しみにしている。自分では歌を作らないが、よそ様の作った歌を見ては「うまく表現できてるねえ」と感心したり、「その気持ちわかるわぁ」と思わず膝を打ったりしている。短歌は短い詩のようなもので、俳句よりも私のような素人には分かりやすい。昨年亡くなった叔母がたしなんでいたこともあり、ひとつやってみるかと重い腰を上げたこともあったが、季語という厄介な約束に阻まれて敢え無く挫折した。短歌の方が断然わかりやすい、いやそれでも中には全く作者の発想の情景を理解できなくて、ポカーンとしてしまうこともある。そしてその歌が複数の選者に支持されているのを見るにつけ当惑するしかない。つまり、自分の中ではピ~ンとこなくて、その歌の何がいいのか、どこがいいのかが全く理解できないのだ。となると、これはもう感性の違いで、努力してどうこうの問題ではないので、それ以上は関わるのはやめて忘れるに限る。

 そんな『朝日歌壇』にも毎年『番外地』と言う企画があって、過去に寄せられた歌の中から”選外ながら味わい深い歌”を特集してくれる。その中で、私が注目したのは「パンプキン詐欺」と言う言葉で、パンプキン詐欺って かぼちゃの押し売りなの ふと問う孫に座布団一枚 という丸山富久治さんが詠んだ歌だ。一瞬「パンプキン詐欺」って令和の新語で若者言葉かと勘違いしそうになったが、実は還付金詐欺の還付金をパンプキンと聞き間違えた?だけのことだった。よく聞いてみれば、ただそれだけのことだが、馬鹿にすることなかれで、そのセンスはいい線いっているではないか。日曜日の人気番組『笑点』なら間違いなく座布団一枚貰えるレベルだ。語呂合わせ、と言うか聞いたら誰でもクスッと笑わずにはいられない。たぶん、お孫さんは小学生、いや、もっと小さいのかもしれないが、素直な疑問をサラッと口にしているのがとても新鮮に感じる。だからこそ、丸山さんはその瞬間を見逃すことなく、瞬時に短歌として記録したのだ。

 大人には到底思いつけない、いや逆立ちしたって出てきはしない発想、それが子供には自然と備わっているようだ。事実、『朝日歌壇』には4人の選者がおられるが、彼等が満票を投じた歌を詠んだのは常連の小学生の男の子と女の子で、しかも二人は姉弟だった。果たして彼らはどんな素晴らしい歌を詠んだのか。4人の選者の心を鷲掴みにした歌というのはどんなものなのか。先日それを知る幸運に恵まれたが、意外にもそれはごくごく日常の風景や心模様を詠ったもので、ガーンと心に響くような衝撃が全くなかったので気が抜けてしまった。取り立てて目立つような刺激的な表現などどこにもなく、意図的に比喩を効かせているわけでもなかった。

 彼らはその時その時の自分たちが感じたままを平易な言葉で、というか、誰にでもわかる言葉で素直に表現するだけだ。それが子供らしいと言えば、それまでだが、大人には真似ができない芸当らしい。大人はどうしたって、何とか体裁よくとか、自分だけの表現をしようと欲深くなってしまうので、肝心の気持ちがぶれてしまって、他者には伝わらない傾向があるのかもしれない。それに子供は大人が気付かない日常の風景を切り取るのが得意なのだ。もちろん大人だって子供だった頃はそうだったのだが、大人になるに連れて、いつの間にかその特技を忘れてしまうようだ。

 もう一つ注目したいのは「コロナっとる」と言う言葉で、松本進さんの歌、久しぶり 元気じゃったか? それがなあひどくはないが コロナっとった に使われていた。コロナ関連の歌は今年も天文学的に多かったが、「コロナっとる」なんて、面白い言葉は聞いたことがなかった。間違いなく新語大賞に選ばれても可笑しくない。コロナで高熱が出て、布団に寝転がっているしかない状態とコロナという感染症の名前との語呂合わせとも受け取れる。言われてみれば、すぐに合点がいくのに、自分ではなかなか思いつかない表現だからこそ、共感できるのだろう。

mikonacolon