人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

ランドセルへのこだわり

今週のお題「買いそろえたもの」

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ランドセルはもはや値段は関係ない?

 今年もまた新学期の季節がやって来た。この春小学校に入学する新一年生が揃える学用品の筆頭にあげられるのは、なんと言ってもランドセルだ。今のランドセルで驚かされるのは、デザインはたいして変わらないのだが、色が多種多様で、しかもその価格が高額なことだ。私たちの頃はランドセルは親が買ってくるもので、男の子は黒、女の子は赤と相場が決まっていた。そういうものだとしか思っていなかったので、色が気に入らないだの、もっと可愛いのがいい?だのと文句を言う余地などなかった。ランドセルに対する要望は皆無に等しかった。当時の親たちは学用品を揃える費用を少しでも安く抑えようとしたらしい。だから、西友イトーヨーカドーのチラシに載っているお値打ち品を買って来たと思う。正規の値段で買うと、3万円はするランドセルがなんと1万8千円で買えたと母が喜んでいた。あくまでもここでの話はうちの話でよその家では状況は違っていたかもしれない。でも学校に行ってみたら、女の子はほとんど赤いランドセルでみんな一緒で安心したのを覚えている。もし、そこに自己主張の強い子がいて、自分は絶対ピンクのがいいからとピンクのランドセルを背負ってきたらどうだろうか。たちまち目立って、皆の注目の的になっただろう。そんな冒険は誰も侵さなかった。

 以前、近所の人たちと井戸端会議をしていたら、ランドセルの話になった。その中のひとりが「うちの孫のランドセルはグレーなのよ」と得意げに言った。グレー?まさか、私の聞き違い?子供がなぜ灰色が好きなのか。どうしてグレーを選んだのか。一同どう反応していいか分からないが、その場の空気を読んだのか、誰かが「あら、おしゃれじゃない!」。何でも言いたいことを言う性格の人に対抗するように、とっさにそんな当たり障りのない言葉が出たのだろう。すると、相手は「そうなのよ。子供なのに感心するでしょう」と満面笑顔になった。この人の娘さんは20歳で出来ちゃった婚をして子供を産んだ。その孫がグレーのランドセルを選んだわけは、「ちょうど私の持っている洋服にピッタリだから」だった。つまり、その子は母親の趣味で小さい頃から白や黒、グレーなどのモノクロの服を着せられていた。どう見ても赤やピンクはおかしい、何か変で落ち着かないと子供心に思ったらしい。

 確かにそんな小さい女の子が大人が感じるようなことに気づくなんて素晴らしいことかもしれない。皆、グレーに決めた理由を聞いて口々に「凄いね、小さいのに自分をちゃんと持っているのね」と言って褒めちぎっていた。それにその女の子は親に他の子のような鮮やかな色を着たいとは言わなかった。自分にはモノクロの服が一番似合うと感じていたらしい。私の場合は子供の頃はピンクに憧れていたが、大人になるにつれて、その気持ちはだんだんと萎んで消えて行った。やはり茶色やグレーの方が落ちつける色になった。考えてみると、その女の子はその時点でもう”小さな大人”?なのだろうか。それとも、偶然に自分の身の周りがモノクロなので、自然と”落ち着ける色”を好むようになったのだろうか。

 近所にあるモールにお直し専門店があって、店頭に中古の服を並べて売っている。この間、通りかかったら、綺麗な水色と黒のランドセルが置いてあるのを見つけた。値札は何と300円でお買い得品だ。数日たって誰かが買い求めたのだろう、黒いランドセルは無くなっていた。水色のランドセルはこれが6年間本当に使われていたのかと思うほど、傷もなくとても綺麗だ。おそらくこのランドセルの持ち主は大切に使っていたのだろう、と物思いに耽っていた。なのに、そこへ、「お義母さんは孫のランドセルに8万円も払ったんだって!」という友だちの声がして、現実に引き戻された。

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