人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

風を感じるレストラン、ドン・ミゲル

今週のお題「好きなお店」

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▲レストラン、ドン・ミゲルの入り口。入ったらすぐにある階段を下りていくとカウンターが見える。テラス席はさらに下に降りて行く。

渓谷の谷間はレストラン

 スペイン南部の断崖絶壁で有名な街ロンダは人気観光地です。いつも観光客でいっぱいのヌエボ橋のすぐ脇にあるレストランがドン・ミゲルなのです。みんなが橋にもたれて写真を撮ったり、雄大な峡谷の景色を堪能しています。私の観察によると、朝10時ごろから夕陽が沈む時刻まで人影が消えることはありません。というのも、たまたま泊まったホテルがヌエボ橋が部屋から丸見えの場所にあったからです。誰もが橋の側からすぐには立ち去ろうとしないで、目の前の景色に引き付けられたままです。ふと橋の下を見ると、テーブルとイスがあって何人かの人が食事をしているのです。渓谷の谷間を利用してレストランをやっているようです。よく見るとフロアーは2階になっていて、さらに降りて行けばより谷底に近づけるのです。かなりの広さがあって渓谷を眼下に見下ろせる席もあります。それで決めたのです、明日は朝早く行って特等席に座わろうと。ゆっくりと食事しながら景色を堪能したい、という欲望が湧いてきました。どうせなら、立ったままではなくて、座って好きなだけ楽しまなくてはと。

 

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▲向かいの断崖絶壁の上に建物がずらりと建ち並ぶ。不思議な光景にしばし見とれてしまう。

 

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▲私のお目当ての眺めのいい席。この下のフロアーにもたくさんのテラス席がある。

 

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▲コーヒーを飲みながら遠くの景色を堪能する。

静けさと景色が最高のごちそう

 翌日、ヌエボ橋から覗いてみると、もうレストランはとっくに開いているはずなのに人影はありません。それでも私のお目当ての席に誰もいないのを確かめてからレストランに行きました。ワクワクして席に座り景色に見とれていると、店員さんがやってきました。聞いてみると、今の時間は飲み物だけで、食事は12時からだというのです。コーヒーを注文して、食事の時間まで待つことに決めると、そこへカメラを持った男性がやってきました。お客さんかと思ったら、写真だけ取らせてほしいと店員さんに頼んでいたようです。あちこち写真を撮りまくっていたかと思ったら、いつのまにか姿が見えなくなりました。もっとも、こちらも目の前の景色や遠くの景色、それに眼下の谷底を携帯で撮るのに忙しいので忘れていました。

 12時が近づくと店員さんが赤いテーブルクロスを持って、お昼の用意をするためにやってきました。ところが、それまで待っていたのに、どういうわけか食べなくても満足してしまったのです。結局、他のお客さんが誰も来ないまま、そこを立ち去りました。考えてみると、このレストランのように、風を感じながら食事も景色も楽しむような経験をしたことはあまりなかったような気がするのです。例えば、海を眺めながら食事をしようとしたら、いきなり予約のカードを置かれてしまいました。食べ始めてすぐに、何も言わずに「帰れコール」です。北欧のストックホルムでの出来事に「よそ者にとっては厳しいところ」というイメージが私の中に出来上がりました。

 意外だったのは、ヌエボ橋にあんなに人が集まっていたのにレストランにはあまり人が来ないのです。夕方になると人の群れはどこかに消えるのに、入ろうとしたレストランはどこもガラガラでお客がいないのです。泊まっていたホテルにもレストランはあるのですが営業している気配はありませんでした。だからか朝食のビュッフェのパンは硬くてどう見ても何日か前のものでした。夕暮れ時にロンダで唯一お客がいる店はマクドナルドだなんて悲しすぎます。ここにも不況の波が押し寄せてきているのです。

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