今週のお題「感謝したいこと」
予約確認せずにロシアのホテルに
あれは2007年にロシアのモスクワに行った時のことです。当時はまだbooking.comとか、エクスペディアなどというホテルの予約サイトはありませんでした。だから泊まりたいホテルのサイトで直接予約するしかありませんでした。私も旅行ガイドに載っていた安めのホテルを予約したのです。すると、すぐに自動配信で予約を確認したとのメールが来たので「これで大丈夫!」と思ってしまいました。でもこの時ちゃんとホテル側に予約確認をしなかったせいで、思いもよらない事態に陥ってしまうなんて!夢にも思わなかったのですが、そのおかげで涙が出るほどの嬉しい経験をすることになるのです。実は初めてのロシアで、私のこの国に対して持っていたイメージはスパイが暗躍する、貧しくて恐ろしい国でした。
人に助けられてホテルにたどり着いたのに
地下鉄の駅で降りて歩き始めました。ホテルの場所を探そうとするのですが、手元の地図ではよくわかりません。もう夜の8時なので暗くてよけいにわからないのです。それにしても、今思えば、初めての場所にこんな時間に行こうとするなんて。当時の私はいったい何を考えていたのかと呆れるばかりです。それでも幸運なことに犬の散歩をしているご夫婦に出会って道案内をして貰えたのです。彼らがいなかったら、間違いなく私はホテルにたどり着けなかったでしょう。だから、まず、この見知らぬ親切なご夫婦に感謝です。
異国の人に助けられてやっと予約したホテルを見つけたのに、行ってみたら違うと言うのです。予約確認書に書いてあるホテルは別の場所にあると言われて、一瞬目の前が真っ暗になりました。同じ系列のホテルなので、パンフレットを見せて場所を説明してくれます。でもそこは今いる場所からは遠すぎます。こんな夜遅くに知らない場所にどうやって行けばいいのか、想像もできませんでした。
絶望したら救いの手が
どうしたらいいのかわからず、呆然としてしている私に、受付の女性は電話の受話器を差し出しました。受け取ってみると、聞こえて来たのは「今からこちらに来ませんか」というホテルの人の歓迎の声でした。でも私はとても行けそうにないのです。そこにたどりつける自信もないし、この場から外に行く勇気が出ないのです。返事をすることができない私はその場に座り込んで頭を抱えてしまいました。
はっきり言って、こんな時は他の国ならたぶん放っておかれるのが落ちです。誰も相手にしてはくれないはずです。それなのに、この国は違いました。受付の女性が同情して「心配しなくて大丈夫!No problem!」と慰めてくれました。「このホテルに泊まっていいから安心して」と言われて、どれだけホッとしたことか!だから、あの時の受付の女性の寛大な優しさに感謝しかありません。
私が身から出た錆のせいで失態を演じていたとき、ちょうど受付の側を一人の男性が通りかかりました。作業服を着たその人はロシア語が通じない私にホテルの部屋の間取りを説明しようとするのです。紙に図を書いて、シャワーとトイレは2つの部屋で共同で使うことになっている旨をわからせようとします。そして「そういう部屋しかないけど泊まるのか、大丈夫なのか?」と私の意志を確認しようとするのです。もちろん断る選択肢などありません。地獄の底にいたとばかり思っていたのに、天国への階段を目の前に見つけたようなものですから。当時の旅ノートに貼ってある見取り図を見ると、この男性のことを思い出します。だから見ず知らずの外国人に誠実に対応してくれたこの男性に感謝です。
mikonacolon