ロシアの国境を越える
しばらくしてロシアの国境が近づいて来ると、バスは入国審査場の建物にゆっくりと入って行く。バスが止まるとすぐに、軍服のような制服を着た係官が乗り込んできた。どこかで見たことがあるような、戦争映画でお目にかかるようなカッコいい制服だが、見慣れないのでやはり怖く感じる。係官は乗客にパスポートを出すように言って全員の分を集めてまわって出て行った。
それからなにやら前方の乗客が降りようとしているので、みんなも後に続いてバスを降りる。これからどうすればいいのかわからないが、自分の荷物を忘れないように気を付ける。乗客の列に続いて歩いて行くと、そこには空港の手荷物検査場のようなX線検査機と入国審査の窓口があった。外が全く見えないのでバスがどこに行ったかはわからない。
どうやらここでしばらく待たなければならないようだ。さきほど集めた乗客のパスポートにスタンプを押すのに時間がかかるのかもしれない。
一時間ほど待っていたら、扉の向こうにバスが見えた。みんなもバスに早く乗りたいようで、着席するとほっとする。そこへ係官がきてパスポートを返してくれて、これで入国審査が無事終わったことになる。
バスの中から見た光景は、人々が長い列を作り狭い通路の入り口で待っている姿で、向こう側のエストニアに行きたいのだ。徒歩で国境を越える人の多さに驚いた。
サンクトペテルブルグでの親切がありがたい
バスは無事サンクトペテルブルグのバスターミナルに着いたが、持っている地図を見るとどうもここではないらしい。バスターミナルは2つあるので、一つ手前で降りなければならなかった。夏なのでまだ明るいので、暗くならないうちにと思い、地図を頼りに運河沿いを歩き始めた。
そろそろ着いてもいいころなのにバスターミナルが見えてこないので、通行人に尋ねるが、相手にしてもらえない。ロシア人って冷たいのではという、先入観があるので、しかたなくまた尋ねてみるが、自分のつたないロシア語につきあってもらえない。
疲れ切って困りきっている自分を助けてくれたのは、ロシアの親切なおばさんでした。ホテルに行くために地下鉄の駅を探していると、そこまで連れて行ってくれたのです。ロシアの地下鉄に乗るのが怖くて勇気が出ず、躊躇していると、「あそこでジェトン(コイン型のきっぷのこと)を買うのよ」と促され、改札の前まで来てくれて、「ほら、早く行きなさい」と背中を押してくれました。
日本よりもはるかに速いエスカレーターが怖かったけど、すぐに慣れ、地下鉄の車内も日本となんら変わりはありませんでした。おばさん、ありがとう。あなたのおかげでロシアが好きになりました。
mikonacolon