人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

ロシア人のおかげで地下鉄に乗れました

今週のお題「感謝したいこと」

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 地下鉄に乗る勇気がなくて

 正直に言うと、私はパリとかウイーンの地下鉄には乗ったことがありません。なぜかと言うと怖いからです。あまりにもスリに囲まれたとか、カバンを取られそうになったとかいう危険情報が多すぎるからです。だから近寄らないのが一番だと思って乗らないのです。では移動はどうするのかというと、ほとんどバスを利用していて、それで大抵は間に合ってしまいます。以前知人がツアーでパリに行ってきたのですが、なんと自由時間に一人で地下鉄に乗ってきたと言うのでびっくり。「よく乗れたね、怖くなかった?」と聞いたら、「もうドキドキだった」と本音を吐露。でも私は内心では彼女の勇気に感心していたのです。

 そんな私がエストニアのタリンからバスに乗り、ロシアのサンクトペテルブルクに着きました。バスを降りて気が付きました、バス停をひとつ間違えたことに。しかたなく地図を見ながらどこまでも続く運河の河畔を歩くことになりました。しばらく歩くと、自分が今どこにいるか確かめようと思い、道行く人に尋ねることにしました。一人目の人は急いでいるのか、相手にしてくれませんでした。

 次に尋ねた人は中年の人の好さそうな女性でした。時間に余裕があるようで、私の拙いロシア語にも耳を傾けてくれました。思った通り道は間違っていなかったようです。それで最寄りの駅はどこか聞いてみたのです。普通なら駅の場所を教えてもらって、「どうもありがとう」で終わるはずです。ところがその人は一緒に行ってくれるつもりで、私にニコニコ笑いかけるのです。思いがけない親切にびっくりしたり、ありがたく思ったりしているうちに地下鉄の駅に着きました。

ロシア人の笑顔に背中を押されて

 「わあ、地下鉄かあ」と躊躇していると、その人が前方にあるジェトンの販売機を指さしました。当時はジェトンというコインのような物を入れて改札を通ることになっていました。実はこの時すでに地球の歩き方の読者からの口コミを読んでいたので、ロシアの地下鉄は安全安心なのだとはわかっていたのです。それでも、やはり戸惑ってしまい、初めの一歩が踏み出せませんでした。ジェトンを買って戻ってきた私にその人は「さあ、早く行って」とまたもや笑顔で改札に行くよう促してくれます。それで勇気が出て歩き始めたのですが、途中で振り返るとその人はニコニコと手を振ってくれていて。その時確信したのです、どうやら安心して地下鉄に乗っていいらしいのだと。あの時その親切すぎる女性がいなかったら、どうなっていたか、あの初めの一歩を踏み出せていただろうか。そう考えると、本当にありがたいです、あの方には感謝しかありません。

 あの女性に見送られて、いざホームに降りるエスカレーターに乗ったら、その速さと長い距離に驚かされました。それも最初のうちだけですぐに慣れてしまいます。ロシアの地下鉄は深い所にあるせいか、階段はなくエスカレーターで乗り降りします。車内の光景はつり革がないだけで、あとは東京や名古屋の地下鉄と何ら変わりはありません。

 今思うと、私が出会ったあの女性はロシア人の代表みたいな方だったと言えます。母なる大地のロシアの地に住む、寛大で思いやりがある人、そんな人に出会えた私はなんて幸運なのでしょう。

mikonacolon