人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

人以外の者と会話する方法

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▲「ルドルフとイッパイアッテナ」の主人公の黒猫ルドルフ。一見してクロヒョウのようなカッコイイ絵なのですが、れっきとした元飼い猫です。

答えを探しに本屋に走り、斉藤さんの本を見つけて

 7月18日の朝日新聞の朝刊に児童文学作家の斉藤洋さんのエッセイが載りました。題名は「人でない者たちとの会話」でとても不思議はタイトルなので、思わず一気に読んでしまいました。斉藤さんは若い頃は児童作家になるだなんて、夢にも思わなかったそうです。その頃ちょうど同僚に「僕は高校生の時家の柿の木と話したものです」などと言われて仰天しました。人でない者、それも柿の木とどうやったら話ができるのか知りたくて堪りませんでした。何とか聞き出そうとしたのですが、邪魔が入って目的は達成されませんでした。そんな斉藤さんは2~3年前パンフレットの仕事で、市川市の動物園に出かけました。そこに出かけて季刊誌に載せる雑文を書くのが仕事でした。

 ちょうどレッサーパンダがいたので、その子と自分とが会話する場面を書いたら面白いと思ったのです。普通は動物がしゃべるわけないだろうと言われるかと心配したのですが、杞憂に終わりました。動物は人間の言葉がわからないかもしれませんが、ちゃんと感情は持ち合わせています。彼らは彼らなりの視点から物事を見ているのですから、当然会話は成立するはずなのです。人間が思ってもみなかった真実を教えてくれることもあるでしょう。

 レッサーパンダと言うと、まだ雪が残る3月の初旬に旭川旭山動物園に行ったことがありました。レッサーパンダと書かれてある園舎の前で姿の見えない主役を捜していました。「レッサーパンダなんて、いないじゃないの!」と憤慨し、諦めて帰ろうとした時でした。ふと空を見上げたら、止まり木に何かがへばりついているのが見えました。最初見たときは、それはただの茶色い木でしかありませんでしたが、ようく見ると何かの毛がはみ出していたのです。止まり木と同化していたレッサーパンダが、「どこにもいないじゃない!」と騒いでいる人間の声で昼寝から目覚めたのかもしれません。いつまでも煩いので「僕はちゃんとここに居るよ」とアピールしたかったのです。その生き物はさも退屈だと言わんばかりにクタッとして、縞々の尻尾をダラッとさせながらこちらを見つめています。斉藤さんの言葉を借りると、「こんな寒い所にわざわざ来るなんて、もの好きだね」とでも言いたかったのかもしれません。

 次の仕事は船橋にあるテーマパークに行って、そこで何か感じたことについて文章を書くことでした。でもそこには動物がいないので、仕方なく風車と話をして記事にしました。どうやら斉藤さんは顔のない風車とだって自由に交流できるらしいのです。それができれば、「人間の彫刻はもちろん、人でない者が私以外の、そばにいる人に話しかけているのだって、内容がわかるようになるのだ!」そうです。こんな超能力としか思えないような力をどうしたら得られるのか、知りたくてたまらなくなりました。普通の人が見えないものを見るのが作家なのだと、映画『人生の幸せの作り方』でモーガン・フリーマン演じる老作家は言っていました。隣に住む作家志望の女の子へのアドバイスは「目に見えない物を見なさい!」で、それは人だけではなく、人の心も含まれているのです。想像力を思う存分働かせて自分だけの世界を作り上げること、それが作家になる近道だと教えてくれるのでした。

 斉藤さんの言葉も、それと似ていて頭の中にイマジネーションが沸き上がって来ると、自然と言葉が生まれる気がするのです。私が風車に話しかけるとしたら、まず「君の仕事は面白いのかい?きっと、広い世界を旅した鳥たちから面白い話だって聞けるのんだろう?」とまあ、こんな程度のものです。悲しいことに、私には想像力なんてカケラもありませんから。実は以前に古本屋で斉藤さんの著書「ルドルフとイッパイアッテナ」を見かけたことがありました。でもその時は子供の本だと馬鹿にして見向きもしませんでした。今回は本屋を捜し回ったら、やっと続編を見つけることができました。もう少しで読み終わるのですが、「人でない者と会話する」方法は未だにわかりません。

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