人生は旅

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眠れない夜に想うこと

今週のお題「眠れないときにすること」

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マドリード新王宮の階段ホール。NHKまいにちスペイン語テキストから。

眠れない夜には記憶の底から昔の思い出が蘇ってきて

 眠れない夜と言えば、私の頭の中にすぐ浮かぶのは大好きなオフコースの『眠れぬ夜』です。恋人の裏切りで今ではもう二人の関係は終わっています。でも、もし恋人が目の前に現れて、涙流して許して欲しいと哀願したら自分はどうするだろうか。もちろん許すなんてことありえない。考えてみると、あの頃は至上の物だと錯覚していた愛に縛られて動けなくなっていた。それに比べて今は、愛のない毎日が自由だと実感している。でも果たして本当に昔の恋人がすがる手を押しのけ、振り切って逃げられるだろうか。そんな冷たい、毅然とした拒絶としか言えない態度を彼女に対してとれるだろうか。曲の最後には「僕にはわからない」となり、現実には起こりえないことなのに、ついついありもしないことを考えて悩んでしまう。それが眠れない夜と雨の日であり、「忘れかけてた愛が蘇る」のだと曲は終わるのです。

 現実には眠れない夜に過去の恋愛や手痛い失恋のことなどが頭の中に浮かぶことは滅多にありません。どちらかというと、昔の思い出、それも記憶の彼方にあるような子供の頃のことを思いだします。もう会うこともない幼馴染や同級生との懐かしい場面が突然蘇ってくる時があります。以前、どうしてなのかわからないのですが、田舎にいた頃の同級生の女の子のことをふと思い出しました。そしたら急に会いたくなって、声が聞きたくなって、会いたい気持ちが抑えられずに電話してしまいました。もちろん相手は訝し気な態度で私がどうして電話してきたか訳が分からい様子です。当たり前です、こちらは会いたい気持ちでワクワクしているのに、何も知らない相手にはた迷惑な話なのですから。どうやら相手は今忙しいようで、早く電話を切りたいのが他人行儀な声から伝わってきます。明らかに歓迎されていないので、寂しさを堪えて「元気でね」と言うのが精一杯でした。

 彼女と私の出会いは小学生の頃で、私が住む村にある借家が立ち並ぶ地域に彼女の家族が越してきたのが始まりでした。地元組の私たちと他所から来た彼女たち3人組とで毎朝集合場所の空き地に集まって一緒に学校に行きました。話をするうちに気が合って彼女と仲良くなりました。しばらくして父親の仕事の関係で故郷の秋田に帰ってしまって離れ離れになりました。でも中学生になるとまた戻ってきたのですが、今度の住まいは別の地域でした。それでも自転車で行ける距離なのでよく遊びに行っていました。

 高校は別だったので、喧嘩したわけでもなく自然と交流は消滅しました。でも何年も経ってから偶然に同窓会で再会して、また付き合うようなりました。彼女は昔からなりたかった保育士になっていました。その後、結婚することになったと聞かされて驚きました。何と相手の人は同級生のよく知っている男の子の兄さんだったからです。旦那さんになる人が○○君(同級生)のお兄さんだなんて、そんな偶然があったなんて!とまさに”事実は小説より奇なり”だなあと仰天したのです。

 彼女の旦那さんは会社員なのですが、以前から社会運動のリーダーでもありました。世の中を少しでも良くしたいと活動していたので、周りの人たちから市議会議員に押されたときは引き受けるつもりでした。選挙に立候補すると家族に話したら、親も親戚も大反対でした。でも家族の中で唯一妻である彼女だけは賛成してくれました。「やりたいならやってみればいい」。子供のこともあるしこれからどうなるのかわからない状況で、実に勇気ある発言でした。幸運にも旦那さんは当選して市議会議員になりました。そう言えば、中学の時彼女がふとこんなことを言ったのです、「外交官の妻になりたい」と。これって何かの志のある夫を陰で支えたいということですよね。ある意味、彼女は現実にその時の夢も実現させたのです。

 一方で、彼女自身も仕事で挫折を味わって、一時は仕事を休職していた時期もありました。保育園で子供から目を離したすきに、と言っても一人だけ見ているわけではないので責任を問うこと自体どうかと思うのですが、ある子供がジャングルジムから転落してしまいました。保育園の誰も彼女の責任を問うこともなかったのに本人にとってはショックな出来事でした。もう二度と戻れないと思ったこともあったはずですが、彼女は事故のトラウマを克服して今も保育士を続けています。

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