人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

かいじゅうたちのいるところ

見る前と見て眺めた後では大違い!

 最近なぜだか分からないが、無性に絵本が読みたくなった。そんなときはたいてい心模様が迷走中で、さながらストレイシープのようになっていることが多い。大好きだった中国ドラマにも飽きて、それでも無理して見ていたら、「私、いったい何やってるんだ」とふと思った。嫌々ドラマを見ることは、時間の無駄に他ならない。そりゃあ、確かに時間つぶしにはなるし、別の世界へと簡単に行けてしまうから気分転換にはなる。だがどう頑張ってもドラマの世界に感情移入できないのだから、虚しいだけだ。

 それで動画サービスで中国ドラマを無理矢理に何でもいいから見ることをやめてみた。すると、ぽっかりと時間が空いて、というか時間の流れがゆっくりになった。今までドラマに使われていた時間がそっくりそのまま使いたい放題になったわけだ。さて、この自由に使える時間をどうしようか。そうだ、読書もいいが、活字を追うことは想像以上に疲れることだ。それならたいして字がなくて、見て楽しめるものがいい。つまり、それは絵本で、絵本と言うとなんだか子供の読み物だと誤解されそうだが、絵本は子供だけのものではない。大の大人が読んで泣いてしまうのだから、侮れない。

 NHKのテレビ番組『ドキュメント72時間』に出ていた絵本専門店の店主は閉店後にバーを開いている。店にあるカウンターでは側にある書棚からお勧めの絵本を取り出して読み聞かせをしてくれる。「こんなのどうですか?私は個人的にはとても好きなのですが・・・」と前置きして読んでくれたのは『わたしはあかねこ』と『わたしとなかよし』だった。確かに、2冊とも子供だけに与えて置くにはもったいないほど胸に突き刺さる内容だ。それで私はビデオに録って置いた画面を停止し、本棚の中身を調べてみた。店主の絵本の趣味にとても興味が湧いたからなのだが、沢山ある中で印象に残ったのは『かいじゅうたちのいるところ』だった。

 この本は以前に新聞の広告で見かけたこともあったし、またマスコミである時期話題に上ったこともあったが、私自身はすっかり忘れていた。当時は絵本の表紙がなんだか怖そうで、その絵柄のイメージから言っても近づきがたい印象だった。とは言っても、この本はというよりもセンダックという著者の本は世界中でロングセラーになっているという。まずはこの本の中身を紹介したい。下記の2枚のページを眺めたらその秘密が少しは分かるかもしれないから。

 

 

 

 この絵本に出て来るかいじゅうたちは一見怖そうではあるが、薬をかけられて子供の思うままに操られている。やんちゃで気まぐれな子供が王様のように振る舞い、かいじゅうたちはまるで奴隷のようだ。だいたいが大人のステレオタイプな考えではカイジュウというものは危険で恐ろしい生き物だ。まさかかいじゅうと友だちになって遊んで楽しむなどとは考えたこともないはずだ。さしずめ日本ではこの本に出て来るかいじゅうは鬼に相当するかもしれない。子供の絵本にふさわしい絵というものがあるとしたら、この本のセンダックの絵はそれとは一線を画している。不思議なことにこの本を読み進めていくうちに、かいじゅうたちがユーモラスに見えて、しかも善良に思えてくるから可笑しくなる。むしろ、子供の方が独裁者に思えてくるだなんて、いったいどういうことなのか。こうなると作者の思うつぼで私は魔法にかけられたのに違いない。

 作者は子供の心が手に取るようにわかるらしく、かいじゅうたちとの遊びにも飽きるときがやって来た。子どもは家が恋しくなって、「もう俺は帰る」と言い出した。その時になんとかいじゅうたちは「俺たちはお前を食べたいほど好きだ」!?と泣いたのである。そんな彼らの切なる気持ちを子供が気にするはずもなく、さっさと船に乗り込んだ。この絵本の魅力はセンダックしか作り上げることができない独自な世界を楽しめることに尽きる。

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